米小売各社が年末商戦前倒し、価格競争激化で利益率圧迫の恐れ

米小売各社は今週幕を開ける年末のホリデーシーズン商戦で、
例年よりセール開始日を早めたり、営業時間を
延長するなどの特別対応を計画している。

一方、消費者によるパソコンや携帯電話を使った
商品・価格のチェック習慣が広がったことが背景となり、
各社の利益率は圧迫されそうだ。

小売大手ウォルマート・ストアーズ、玩具販売大手トイザラス、
アウトレットモールなどは、例年ホリデー商戦の皮切りとなってきた
感謝祭の翌日ではなく、感謝祭当日の11月24日夜にいち早く
ディスカウントセールを企画し、多数の集客を図る。

また、ディスカウントストアのターゲットやデパートのメーシーズ、
コールズなどは、感謝祭明けの「ブラックフライデー」の営業開始時刻を
25日未明に前倒しする計画だ。

各社とも、セール時期の前倒しに加えて広告宣伝費も積極投下し、
消費者のホリデーショッピング支出という限られたパイを奪い合う
競争に参戦する意向だが、これにより、各社の利益率は
逆に圧迫される恐れがある。

バークレイズ・キャピタルのアナリスト、ロバート・ドルブル氏によると、
米国内の百貨店及び大規模小売チェーン店の粗利益率は今年、
前年比で0.4%ポイント低下する見通し。

全米小売協会(NRF)では、2011年のブラックフライデー
買い物に出掛ける人の数について、昨年の1億3800万人から
10.1%増となる1億5200万人と予想している。

米消費者連合(CFA)と米クレジット・ユニオン協会(CUNA)が
実施した今年のホリデーシーズンの支出に関する調査によると、
消費者の41%が昨年より減らすと回答し、昨年より増やすと
答えた人の割合は8%にとどまった。

これについて、CUNAのチーフエコノミスト、ビル・ハンペル氏は、
それでも2008年や2009年と比べれば「かなり堅調」との見方を示した。

予想はまちまちだが、小売業界の今年のブラックフライデーの売上高が
インフレ率を上回る伸びを示す可能性は低いというのが
大方の専門家の一致した見通しだ。

トルティナ・フィナンシャルの最高投資責任者(CIO)、
パティ・エドワーズ氏は、それこそが
ブラックフライデーの販売をめぐる
小競り合いの一因だ」と指摘する。

「ライバル店が5時間早くオープンするなら、
自店は6時間早く開店しよう」といった動きが
広がっているのだという。

小売チェーン世界最大手のウォルマートでは、セールの前倒しに加えて
予約販売や最低価格保証(プライスマッチング)といった手法を駆使して、
今年7月以来の好調な業績を支えとなってきた顧客の囲い込みを目論む。

ただし、この動きは競合他社にとっては悪材料となりそうだ。

ゴールドマン・サックスのアナリスト、アドリエンヌ・シャピラ氏は
ブラックフライデーの売上高でウォルマートが勝者となる公算ということは
つまり、収益では勝者が存在しないことを意味する」と述べた。

ウォルマートが予約販売の制度を復活させたことによっては、
既に競合するターゲットで玩具販売が落ち込む影響が出ている。

専門家は、小売各社は特定のアイテムを買う目的で立ち寄った
「一見の客」をロイヤルティの高い「常連客」にする策を見出す
必要があると指摘している。

カレンダーの並び(曜日の巡り)による影響も大きい。

今年は感謝祭からクリスマスまでの間に、土曜日が、
昨年より1回多い5回含まれている。

クリスマスイブが土曜であることで、消費者が
この日に最後のクリスマスプレゼント購入を行う
可能性が生まれ、小売各社にとっては「商機」となる。

また、12月26日がクリスマスの振り替え休日となることで、
買い物客がさらに増える追い風効果も期待される。

このほか、消費者によるパソコン、タブレット端末、
携帯電話を使った商品チェックや購入が増える中で、
オンライン販売も店舗販売よりも速いペースで伸びている。

調査会社イーマーケッターによると、今年のホリデーシーズンの
オンライン販売は、業界全体の売上高が前年比約3%の
見込みであるのに対し、同17%増の467億ドルとなる見通し。

また、NRFでは11〜12月の小売売上高を、
前年比2.8%増の4656億ドルと予想している。