1〜3月期GDPは年率4.1%の高い伸び、政策効果で内需底堅く

内閣府が17日に発表した2012年1〜3月期国民所得統計1次速報によると、
実質国内総生産GDP)は年率換算プラス4.1%と、東日本大震災の反動で
高い伸びとなった昨年7〜9月期以来の高成長を記録した。

政府のエコカー補助金で自動車販売が
大きく増加するなど、個人消費の伸びが際立った。

古川元久経済財政担当相は会見で、景気の上向きの動きは
一時的な政策効果のみでなく「構造的にスタートした」
との考えを示した。

1〜3期は前期比もプラス1.0%と、
昨年7〜9月期に次ぐ高い伸び率。

昨年10〜12月期はタイ洪水や海外経済の減速などが
外需の足を引っ張ったが、1〜3月期は輸出が回復したほか、
自動車販売や高齢者消費などの好調を背景に、個人消費が伸びた。

復興需要は公共工事にようやく表れ始め、成長を下支えした。

設備投資は前期の反動減で2期ぶりに
マイナスとなったが、内需の底堅さに支えられた。

実質成長率は2011年10〜12月期が前期比プラス0.03%に
上方修正された結果、3期連続のプラスとなった。

名目成長率は2期ぶりのプラス成長。

内外需寄与度がそろって
プラスとなったのも2期ぶり。

寄与が最も大きかったのが
民間最終消費支出だった。

伸び率は前期比プラス1.1%となり、昨年7〜9月期の
震災の反動を除けば、2009年10〜12月期の同1.4%以来、
2年ぶりの高い伸びとなった。
プラスは4期連続。
うるう年効果で1日分の上乗せが押し上げた。

加えて第4次補正予算で昨年12月末に復活した
エコカー補助金で自動車販売が増加したこと、
震災後の萎縮・自粛ムードの減退、高齢者中心に
旅行などサービス消費の好調が複合的に作用した。

前期マイナスだった外需寄与度も
プラス0.1%に反転、2期ぶりにプラスとなった。

タイ洪水や海外減速で前期に
落ち込んでいた輸出が、同プラス2.9%に回復。

タイ洪水の影響のはく落や米国経済中心に
世界経済が持ち直したことが影響した。

数量ベースでは米国向けが伸び、
他の地域向けを補った形だ。

品目では電子通信機器・自動車が伸びた。

輸入も同プラス1.9%と引き続きLNG輸入を中心に
伸びているが、輸出の回復がこれを上回った。

ただ、内需のもう一つの柱である設備投資は前期の反動減で、
前期比マイナス3.9%と2期ぶりにマイナスとなった。

機械類・電子通信機器などの減少が響いた。

復興関連の需要は、公的需要を押し上げている。

公共工事など公的固定資本形成は前期比プラス5.4%と
3四半期ぶりにプラスに転じ、昨年4〜6月以来の高い伸びとなった。

復興計画が徐々に工事契約に結びつき、数字となって表れてきた。

一方で民間住宅着工は前期比マイナス1.6%。

すでに着工ベースでは被災地を中心に
堅調な伸びとなっているが、進捗ペースの
GDP統計にはこれから表れてきそうだ。

古川経財相は会見に先立って公表したGDPに関する談話の中で、
国内景気は「上向きの動きが続いている」と評価。

復興需要やエコカー補助金などの政策効果が内需
押し上げに寄与したこと、タイ洪水の反動増や
米景気回復で輸出が復調したことなどが、
プラス成長の背景だと指摘した上で、4〜6月期以降も
「復興需要が景気を下支えすることから、
緩やかな成長が続く」と見通した。

ただ「欧州債務危機の再燃などの
リスク要因には留意する必要」があるという。

さらに会見では、1〜3月期の高成長を支えた個人消費
増加した背景として、雇用者報酬が底堅く推移していること、
サービス支出が復調している点に言及。

「マインドや所得面の改善は進んでいる。改善がより進むかを
注目したい。今回の(伸び)は政策も大きな要因だが、
景気の上向きの動きは構造的にスタートしている認識だ」と話した。

GDPデフレーターは前年比マイナス1.2%となったが、
前期比ではプラス0.02%と2008年10〜12月期以来、
13四半期ぶりにプラスに転じた。

野菜など生鮮食品価格の上昇などで、
民間最終消費支出デフレーターが
プラスに転じたことが影響した。

前年比では依然として
マイナスを維持したが下落幅は縮小。

デフレ圧力は続いているが、
緩和の兆しも見て取れる結果となった。

経財相も「下落テンポは緩和している」とプラス転化を評価したが、
同時に「マクロ的な需給ギャップは依然としてマイナス。
物価下落圧力は続いている。緩やかなデフレ状況にあるとの
認識は変わらない」と指摘。

デフレ脱却の必要性を改めて訴え、
政府の取り組みを加速させる方針を示した。

同時に発表された2011年度の
GDPは前年度比マイナス0.01%。

大震災の落ち込みから夏場にV字回復したものの、
秋には世界経済減速とタイ洪水に見舞われ、
その反動で再び浮上するという浮き沈みを
繰り返してきため、年度を通すと
ゼロ成長という結果となった。

名目ではマイナス1.9%と、
実質・名目とも再びマイナスに転じた。

マイナス成長は2年ぶり。

GDPデフレーターは前年度比マイナス1.9%と、
1955年の統計開始以来、2番目に深いマイナス幅を記録した。

過去最大の下げ幅は、2010年度のマイナス2.0%。

古川経財相は最近の円高について「為替市場の動きは、
欧州の情勢などにも大きく左右される部分がある。
欧州情勢はしっかり注視したい」と言及。

「為替の過度な変動に対して、果断な措置を取っていくことは
従来から政府として変わらない立場だ」と説明した。