スペインが全面支援に言及、ECBは保有ギリシャ国債の元本減免も

スペインがようやく国として全面的な支援要請を
行う可能性を認めたことが関係筋の発言で明らかとなった。

スペインは過去に支援を受けた国々よりも
はるかに経済規模が大きく、支援が現実となれば
これまでになく大がかりになるとみられている。

ユーロ圏当局者はこの日、24日に行われた
スペインのデギンドス経済相とショイブレ独財務相との
会談の席で、デギンドス経済相から、スペインは
約3000億ユーロの国際通貨基金IMF
欧州連合EU)支援が必要になる可能性が
あるとの話があったことを明らかにした。

同当局者はロイターに対し、「デギンドス経済相は、
約3000億ユーロの全面的な支援に言及した」と指摘。

ただ、ドイツはその時点で支援を
要請するとの考えを支持しなかったという。

さらに「欧州安定メカニズム(ESM)が機能を開始するまで
何も進展しない。ESMが機能し始めた時点でスペインの
国債利回りの水準を検証し、(支援に関する)問題を
再考する可能性がある」と語った。

これについて、スペイン政府の報道官は
そうした計画を強く否定。

「支援要請の可能性はこれまで検討されておらず、
協議されたこともない」と述べた。

スペインは銀行部門に対する支援は受け入れているものの、
国全体への支援は必要ないとの立場を繰り返し表明している。

ただこれまで支援を受けた国がいずれも国債利回り
急上昇をきっかけに支援を要請した経緯を踏まえれば、
スペインの支援要請も避けられないのではないかとみられている。

ブルームバーグ通信はこの日、ドラギ欧州中央銀行
(ECB)総裁とバイトマン独連銀総裁が会談し、
ユーロ圏防衛に向けた複数の措置について協議すると報じた。

報道は中銀筋2人の情報として、ドラギ総裁が会合で、
利下げ効果の波及を確実にするため、ECBによる
流通市場での政府債買い入れとともに、欧州救済基金
発行市場で政府債を買い入れる案を示す見通しで
あることを明らかにした。

独連銀報道官は「異例の会合ではない。協議の必要が
あれば会合は開かれる」と説明。

ECB報道官は、ドラギ総裁が理事会メンバーと会談するのは
通常の慣行としつつも、それ以上の詳細についてはコメントしなかった。

イトマン総裁は、ECBの
政府債買い入れ計画に反対を唱えている。

ブルームバーグはまた、ドラギ総裁が
ESMへの銀行免許付与を支持していると報じた。

こうしたなか、ギリシャをめぐっては、欧州当局者が
ギリシャ債務のさらなる削減に向け、欧州中央銀行
(ECB)やユーロ圏各国中銀が保有するギリシャ国債
30%のヘアカット(債務元本の減免率)を適用する案を
検討していることが、複数の関係筋の話で明らかになった。

関係筋は、これによりフランス、キプロス、マルタなどの
一部ユーロ加盟国の中銀への資本注入が必要になる
可能性もあると指摘している。

ギリシャへの公的部門による支援は、ユーロ加盟国による
2国間融資も含めて、現在約2200億〜2300億ユーロ。

関係筋は、債務元本に30%の減免率を適用すると、
ギリシャ債務は700億〜1000億ユーロ削減されるとしている。

関係筋は「各国中銀が保有するギリシャ国債に対する
債務減免措置を採らなかったことは、大きな誤りだった。
これは非常に大きな落ち度だった」としている。

また、この協議に関与しているユーロ圏当局者はロイターに対し、
ギリシャに関して公的部門関与(OSI)が実施される確率は
70%とみている」と述べた。

ただ関係筋は「非常に複雑な案件で、まだ検討の
初期段階にあるため、方法の詳細は何も
決定されていない」としている。
ECBはこの件に関するコメントを控えた。

市場ではこの日も、
ECBをめぐる動向が焦点となった。

仏紙ルモンドは27日、匿名の複数の関係筋の話を引用し、
ユーロ圏各国政府とECBがスペインとイタリアの
借り入れコストの低下を促すため、金融市場への
介入を準備していると報じた。

ルモンド紙によると、ECBは、各国政府が
ユーロ圏救済基金である欧州金融安定ファシリティー
(EFSF)とEFSFの後を引き継ぐ欧州安定メカニズム
(ESM)の活用で合意することを条件に、
協調行動へ参加する意向という。

計画では、まずEFSFが発行市場で
スペインとイタリアの国債を購入。

ESMが発足する9月からはESMがそれを引き継ぐ
可能性がある。同時にECBはスペイン、イタリアの
国債を流通市場で買い入れる。

ただ計画の最終的な取りまとめには
数日もしくは数週間を要する見通しという。

しかしドイツ連銀の報道官は欧州救済基金
銀行免許を付与することについて、事実上の
政府債務ファイナンスになり欧州条約で
禁止されていると指摘した。

また、ECBよりもEFSFによる
債券買い入れの方が問題が少ない
との見解を示した。

さらに、ECBの債券買い入れプログラム(証券市場プログラム=SMP)に
対して「独連銀は引き続き批判的見解を持っている」と語った。

ドラギECB総裁は26日、ECBにはユーロ圏を守るために
責務の範囲内で何でもする用意があると述べ、
高水準となっている重債務国の国債利回り
引き下げに動く可能性もあることを示唆した。

ドイツのショイブレ財務相
ドラギ総裁の発言を歓迎する意向を表明した。

声明で「金融及び信任の危機を切り抜けるために、
各国政府も必要な措置を実施していくことが、
(ドラギ総裁の発言の)前提条件となっている」
と指摘した。