物価見通し2014年度0.8%上昇で目標に届かず=日銀展望リポート
日銀は30日、「経済・物価情勢の
展望(展望リポート)」を公表した。
2014年度の消費者物価(CPI)の上昇率見通しを
初めて示したが、年度平均で0.8%と、日銀が
目標としていた1%に届かない見込みとなった。
2012年度、2013年度の成長率と
物価上昇率の見通しは下方修正した。
展望リポートは年2回、日銀が今後3年間の
経済と物価の見通しと、自らの政策展開を
織り込んだ上で、蓋然性の高い景気シナリオを示す。
注目が集まっていたのは、日銀が物価目標に掲げる
消費者物価1%の達成が見通し期間中に
達成できるかという点だ。
今回は、成長率、物価見通しともに、7月時点よりも
すべて下方修正され、年度平均では2014年度までに
物価目標を達成できない見通しとなった。
政策委員9人の大勢見通し(中央値)は、物価が
2012年度0.1%低下とまだデフレが続く状態。
2013年度は0.4%上昇とかろうじてデフレを脱却、
2014年度は0.8%上昇と「着実に1%に近づいていく」
見通しとした。
物価上昇シナリオの背景には、潜在成長率
(概ね0%台半ばと試算)と実際の成長率の差である
需給ギャップが縮小していくとのシナリオがある。
成長率見通しをみると、足元の景気は悪いながらも
2013年度は政策委員の大勢見通しで
プラス1.6%成長を見通す。
「海外経済の持ち直しが次第に明確になるにつれて、
企業収益や雇用者所得の増加を伴いながら、
国内民間需要がしっかりとした伸びとなるため、
潜在成長率をはっきりと上回る」と見ている。
しかも2013年度下期には消費税引き上げ前の
駆け込み需要も発生するため、一時的に
かなり高めの成長になるとしている。
なお、日銀は消費増税の実質GDP(国内総生産)への
影響について、2013年度の成長率を0.3%ポイント程度
押し上げる一方、2014年度の成長率を0.7%ポイント程度
押し下げると見込まれるとしている。
2014年度の成長も「海外経済が過去の長期平均を
上回る成長を実現する」ほか、「低金利の持つ
景気刺激効果も強まっていく」といった材料から
「潜在成長率を幾分上回る成長経路をたどる」と見ている。
ただし、先ほどのように消費税駆け込みの反動が出るため、
成長率は年度では小幅プラスのプラス0.6%とした。
こうした中心的なシナリオに対するリスク要因として
挙げられたのは、第一に海外の経済動向。
欧州問題そのものに加えて、同問題が中国の過剰設備など
需給バランス改善を遅らせる可能性、日中関係の悪化による
日本経済への影響などを指摘した。
また、企業や家計における中長期的な成長期待の低下、
また米国における家計のバランスシート問題に加えて
「財政の崖」など財政政策の不確実性もあるとした。
さらに、消費税引き上げによる駆け込み需要と
その反動の不確実性や、実質購買力の低下による
消費下押しを懸念。
このほか、日本の財政の持続可能性を
めぐる諸問題を指摘した。
物価についても同様に、
上下両方向のリスクを指摘。
需給バランスが改善しても物価が上昇しにくいという
物価感応度、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の
不確実性を挙げた。
輸入物価についても、地政学リスクや天候要因などによる
穀物価格変動など上限両方向のリスクがあるとした。
こうしたシナリオを踏まえた今後の金融政策運営については、
「デフレ脱却と物価安定のもとでの持続的成長経路への
復帰に向けて、強力な金融緩和の推進と成長基盤強化
及び金融機関の貸出増加の支援を通じて、
適切な政策運営に努めていく」とした。
物価上昇率1%が見通せるようになるまで
実質的なゼロ金利政策と金融資産の買い入れを
行うと同時に、企業や家計が前向きな投資、
支出活動を行うよう後押しする姿勢を示した。