大企業製造業の景況感、リーマン前水準を回復=日銀短観

日銀が1日発表した9月全国企業短期経済観測調査
(短観)では、大企業製造業の景況感が2008年9月の
リーマンショック前の水準を回復し、内需好調や円安を
背景に大きく改善した。

企業の価格転嫁も進み、非製造業では販売価格判断が
上昇超過に転じるなどデフレ脱却への動きもうかがえる。

ただ、海外需要は改善が止まり、輸出企業の収益改善は
円安による採算改善が主に寄与しているとみられる。

先行きの景況感も横ばいとなり、増税前の駆け込み
需要が予想される割に企業は慎重だ。

設備投資は計画自体はしっかりしているものの、
実施が遅れていることが課題となりそうだ。

大企業の業況判断DIの改善は、
製造業・非製造業ともに3四半期連続。

特に製造業はプラス12と
前回6月調査から8ポイントの改善。

水準は2007年12月調査のプラス19以来の高さで、
リーマンショック後の水準では最高となり、
リーマン前の水準に戻った。

大企業非製造業や中小企業のDIも改善しており、
景気回復や円安進行などを背景とした企業マインド改善が
続いていることが確認された。

非製造業DIもプラス14となり、
同2ポイント改善。

中堅・中小企業を含めた全規模全産業ベースのDIは
プラス2で、2007年12月調査以来のプラス圏に浮上。

円安進行や堅調な内需などを背景に、自動車や電機機械など
輸出関連や、建設、小売など幅広い業種で改善がみられ、
全28業種中、大企業で19業種、中小企業で20業種が改善した。

一方、気になるのは先行き改善幅が小幅にとどまった点だ。

事前予想では12月にかけて一層の改善が見込まれていたが、
大企業製造業はプラス11と7四半期ぶりの悪化が
予想されている。

非製造業も横ばい。

本来であれば、12月にかけて増税前の駆け込み需要で
内需が盛り上がると予想され、海外経済も持ち直しが
見通されているにもかかわらず、企業は
さほど楽観視していない。

輸出売上げ見通しがさほど伸びていないことや、
公共工事の下期はく落などが背景と見られる。

2013年度の売上・収益計画は、全規模全産業ベースでも
増収・増益が見込まれている。

このうち大企業全産業の2013年度の売り上げ計画は
前年比3.9%増、経常利益計画は同13.9%増と、
それぞれ上方修正されている。

上期の増益拡大が主な要因。

他方で、下期について企業は慎重に見ている。

特に輸出売上高の上方修正幅は0.4%増と、
国内売上高見通しの1.1%増を下回る。

背景にはアジア向け輸出の停滞など、これまで改善してきた
外需の需給判断が前回の5ポイント改善からは横ばいに
とどまった影響もありそうだ。

それでも為替の下期前提レートが94円台と前回から
3円の円安修正となり、輸出企業の増益幅が拡大した。

足元の為替レートは98円台で推移しており、
このまま推移すれば増益余地がありそうだ。

2013年度の設備投資計画は、大企業全産業で
前年度比5.1%増、前回調査から0.3%の
下方修正となったが、これは9月短観の
季節パターン通り。

中小企業は全産業で8%の
しっかりとした上方修正となった。

問題は、投資計画通りに
実績がついてくるかどうかだ。

実績を確認できる法人企業統計では、4〜6月の
設備投資が全体で前年比0.01%増と3四半期ぶり
プラスとなったものの、投資計画に比較すると
わずかな拡大にとどまっている。