アジアに不健全な資金流入も、複数国で不動産が大幅上昇=日銀総裁

黒田東彦日銀総裁は24日、タイのバンコクで講演し、
世界的な金融緩和環境が続く中で、アジア諸国
不健全な資金流入が生じている可能性がある
との認識を示した。

複数の国では不動産価格の大幅な上昇がみられており、
仮に大幅な調整が生じれば不良債権が積み上がる
可能性があると警告。

頑健性の高い金融システム構築の
重要性を強調した。

総裁は成長を続けるアジア地域について、
国内所得水準の向上による豊かな中間層の
形成などを背景に、従来の輸出主導型から
「よりバランスのとれた成長モデルへの
転換が始まっている」と指摘した。

ただ、内外需のバランスのとれた成長への移行を
着実に進めるためには「中長期的に取り組むべき
課題がいくつかある」とし、1)人口動態の変化、
2)過度な信用拡大や金融システムの不安定化リスク
への対応をあげた。

人口動態変化への対応について、少子高齢化
急速に進む日本では「就業者数の減少や経済の
成熟化に伴う労働時間の減少が、潜在成長率の
押し下げ要因となっている」と述べ、年金や
医療保険制度においては「人口オーナスが
財政状況を悪化させる方向に働いている」ことを説明。

「人口動態の変化はかなり正確に予測することが
可能である一方、その流れ自体を転換させることは
非常に困難」とし、アジアが成長モメンタムを
維持していくためにも「早い段階から必要な行動を
とることが有益」と指摘した。

現在のアジアの内需拡大は「グローバルな金融緩和と
これに伴う国内信用の拡大で支えられてきた側面が
ある」と指摘。

現在も世界的な金融緩和環境が続いているが、
アジア諸国へのグローバルな資金流入
健全でないかたちで生じている可能性」にも言及し、
「複数の国で、海外からの資金流入等を背景とした
不動産価格の大幅上昇がみられている」と語った。

その上で「仮に不動産市場で大幅な調整が発生した場合、
金融セクターに不良債権が積み上がりかねない」と述べ、
「そのマグニチュードによっては、経済成長が大きく
かつ長期的に阻害されうる」と警鐘を鳴らした。

こうした歪みを蓄積させないため、「銀行や
金融監督当局が信用リスク管理能力を
高めていく」必要性を強調。

適切なマクロプルーデンス政策のもとで、
過度な信用増加が生じない取り組みを行うことや、
頑健性の高い金融システムの構築が「アジアが
内需を中心とした経済成長を続けていく上での
大きな鍵になる」と語った。

アジアが一大消費地としての役割も担う中、
グローバル企業が積極的にアジアに進出し、
「ビジネスを現地化させる動きが一段と
進展している」と指摘。

日本企業も製造業の現地生産拡大やサービス業における
「現地消費者をターゲットとした進出が進んでいる」とし、
これを受けて邦銀のアジアビジネスも「一段の現地化を
進めることが課題とされている」と語った。