消費増税、景気下押しの新たな要因でない=黒田日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は16日、大阪市内での
関西経済会との懇談会や記者会見で、最近の
経済情勢や今後の見通しについて見解を表明した。

その中で消費増税は以前から決まっており、
増税が消費や景気を下振れさせる新たな要因に
なるとは見ていないとの見解を表明。

国債などの大量購入により量的・質的緩和(QQE)の
緩和効果は「累積的に強まっている」と繰り返した。

また、今後は政府の成長戦略が「ますます重要」と
指摘し、日銀としての意見を表明すると述べた。

出席者からは円安による副作用を指摘する声もあったが、
米国経済が回復しているならば、円安が日本経済にプラス
との考えを繰り返した。

黒田総裁は懇談会冒頭の講演で、日本経済が2%の
物価目標実現に向けて日銀が想定した道筋を順調に
辿っているとした。

4〜6月の実質国内総生産GDP)は前期比年率7.1%と
大幅に下落したものの、「1〜6月と昨年7〜12月を
比較すると年率1.0%成長で潜在成長率を上回る」とし、
潜在成長を上回り需給が締まることで物価の上昇が続く
との見解を示した。

消費税率について「引き上げは以前から予定されていたもので、
ここにきて新たな下振れ要因が生じているわけではない」と述べた。

賃上げが物価上昇と消費増税に追いつかないことについては、
増税と物価上昇の影響の区別が重要」とし指摘。

消費増税で「社会保障制度の持続性に対する信認を
高めることで、家計支出のマイナスをある程度減殺する力も
働く」との見解を示した。

甘利明経済再生担当相が同日の会見で、
消費マインドを冷やさないよう政府の考え方を
示していくことも必要になるのではないかと発言し、
そのことへの所見を問われ、直接のコメントは
控えつつ、「量的・質的緩和(QQE)は毎月大量の
長期国債ETF、REIT(不動産投資信託)購入を
通じて緩和効果が累積的に出てくる」と強調した。

消費増税前の駆け込み需要の反動による耐久消費財
住宅投資の動き、天候による西日本の消費などを点検し、
「物価目標に向けて下方リスクがあれば躊躇政策の調節を
行う」との方針を繰り返した。

黒田総裁はこの日、追加緩和について
「調節」とえん曲に表現した。

前週に行われた安倍晋三首相との会談直後などに
「追加緩和」との表現を珍しく用いたが、この日は
「調節」との従来からの表現に戻った。

総裁は、今後の政府・日銀の経済政策運営について、
金融政策は「経済動向と物価への影響を把握し、
適宜適切な政策を取っていくことに尽きる」と総括。

一方、「政府としてアベノミクスの第2、第3の矢、
特に第3の矢の成長戦略がますます重要になってくる」
と強調し、政府に対して「引き続き意見するとともに、
政府が着実に成長戦略などを実行すること強く
期待している」と強調した。

懇談会の出席者から、円安によるコスト増への
懸念などから為替の安定を求める声も出た。

総裁は「為替の安定が極めて重要」とし
「安定確保に努力する」と明言した。

一方、総裁は4日の定例会見で、現時点で
円安は日本経済にとって望ましいとの考えを
表明したばかりだが、その考えに
「変わりはない」とも明言。

為替相場は経済の基礎的条件に即した安定が
望ましい」とし、「米経済の順調な回復や緩和縮小を
背景としたドル高・円安は自然」と指摘。

「米経済・金融情勢を反映したドル高・円安は
今のところ日本経済にマイナスではない」と繰り返した。