貿易戦争、ドルの足枷に

来週の為替相場は、貿易戦争を打ち出したトランプ米大統領
発言を受けて、ドル安が強まる展開となりました。

主に中国を対象としたものと当初は見られていましたが、
欧州も、日本もその範疇に入ることで、外国為替市場では、
ドルに対する信認が問われている状態です。

さらに、トランプ大統領が強力な減税策を打ち出したことで、
将来の財政赤字の拡大に対する不安感が広がっていました。

これに加えて、今の米国の貿易赤字トランプ大統領にとって
我慢のできない水準となっていることが、今回の件で理解出来ました。

市場では、将来的な財政赤字の拡大、貿易赤字の大きさから、
かつての「双子の赤字」を思い出す向きもあったようです。

あの時は、米国はドルを減価して、「双子の赤字」の苦境を
乗り越えました。

貿易戦争で、各国がトランプ大統領の意に沿わない行動をしたら、
再びドルを減価する行動に出るのではないかとの不信感も
聞かれています。

少なくとも、日本は貿易戦争に陥る前に、円高・ドル安を
容認させられるのではないか、との見方も出ています。

この場合、100円を超えるようなドル安・円高
容認していくのか、そのテンポがどんな形になるのかを
注視したいと考えます。

産業界では、為替相場が乱高下するのが一番困ることですが、
落ち着いた動きの中で100円前後緩やかに変動する分には、
持ちこたえることが出来るとの声もあります。

もちろん、円高自体が中小、零細企業にとっては
大きな問題なのですが、大企業にとっては、貿易戦争が
本格化するよりも、多少の円高は容認するのではないかと
思います。

もちろん、政府も、円高に対して警戒していますが、
全面的な紡績戦争を回避することが出来るなら、
緩やかな円高は容認するのではないかと思います。

この貿易戦争がトランプ大統領ツイッター
とどまっている限り、問題はなく、米政府として
トランプ大統領の無謀な挑戦を退けてくれれば
よいのですが、貿易戦争の道筋が見えてきたときには、
為替市場にとって大きな不安になってくると考えます。

また、日本では黒田日銀総裁が条件付きながら
出口戦略に触れたことで、日本の超低金利政策は
変わらないとみられていた日本の金融政策の
先行きに対する疑念が生まれ、為替市場では
円買いが強まる動きとなりました。

これまで、2%の物価上昇の目標がある中で、
出口戦略について黒田日銀総裁は口を噤んでいたので、
米国、欧州が利上げをしても、日本の金融政策は
動かないと読む声が支配的でした。

しかし、日銀総裁が出口戦略について触れたことで、
日銀の金融政策も将来的には利上げに踏み切るのでは
ないかとの見方が強まってきました。

もちろん、今すぐにということはないのですが、
日銀の買いオペの対応で、市場は出口戦略を
意識するものと見られ、その場合には将来の
利上げが為替市場では材料視されるのではないか
と思います。

年度末に向けて、米国、日本から出てきた円高材料に、
為替市場はどのような反応を見せるのか注目したいと
考えています。

予想レンジは、
ドル円が102.20〜107.20円、
ユーロ円が126.20〜132.20円、
英ポンド円が142.20〜148.20円、
ドル円が78.20〜84.20円。