欧州銀の第3四半期決算、ギリシャ国債で現実的な評価損計上も

欧州債務危機の深刻化を受け、域内銀行は第3・四半期決算で、
保有するギリシャ国債に関し実態に即した
評価損の計上を迫られるとみられている。

欧州証券市場機構(ESMA)は、共通の会計基準
打ち出していないため、第2・四半期決算では、
ギリシャ国債の評価損の計上にばらつきが生じた。

一部はギリシャ追加支援の民間関与に適用される
ヘアカット(元本削減)に基づき21%とした。

一方、実勢価格をより反映し、
評価損を50%とした銀行もある。

第3・四半期末を目前に控え、ギリシャ5年債の
ディスカウント水準は60%に達している。

会計の専門家は、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBA)など、
第2・四半期に評価損を50%とした銀行でさえも、
さらなる損失計上を迫られる可能性があると指摘している。

注目されるのがソシエテ・ジェネラル(ソジェン)、
BNPパリバの仏銀2行だ。

第2・四半期に両行はいずれも保有するギリシャ国債に、
21%の評価損を適用している。

ソジェンは保有するギリシャ国債の大部分が償還を迎え
全額支払われたため、現在の評価損は実質的に35%程度としている。
第3・四半期決算については、コメントを拒否した。

BNPは今月に入り、55%の評価損を適用した場合、
第3・四半期決算(税引き前)で17億ユーロの
損失につながるとの試算を明らかにしている。

ギリシャ国債が会計上どの項目で
管理されているかによって状況は大きく変わる。

売却可能有価証券(AFS=AvailableForSale、
日本の「その他目的有価証券」に相当)で保有している場合、
評価損計上において一段の猶予が生まれる。

国際通貨基金IMF)が今月公表した報告書によると、
ソブリン債エクスポージャーの実現損失の49%は
このAFSの分類から来ている。

AFSの評価損は通常、規制上の資本要件には影響しない。

一方で、四半期ごとに市場価格の反映を求められ、
資本要件に直接的影響を与えるトレーディング勘定で
管理されているソブリン債エクスポージャーは12%に過ぎない。

ESMAと国際会計基準審議会(IASB)は現時点で、
全面的な監査が必要な通年決算により重点を置くとの立場だ。

マイヨールESMA長官は記者団に対し「通年で
(評価水準に)矛盾がないことが極めて重要」との考えを示した。

IASBは前月、一部の欧州銀は第2・四半期決算発表で、
ギリシャ国債に関しより多くの評価損を計上すべきだった
との書簡をESMAに送付している。

ハンス・フーヘルフォルストIASB議長は29日、
「多くの銀行は正しいことを行っており、本格的な監査が
入る通年決算発表では、すべての銀行が正しい判断を
行っていると望んでいる」と述べた。