欧州、後は実行力が問われる

今週の為替市場は、ユーロが底堅い動きを見せるか。

EU首脳会議で、難航していたギリシャ国債
ヘアカットが50%で合意されたことで、
とりあえずの安心感が広がり、
ユーロが買い戻されています。

ドイツとフランスの対立が懸念されていましたが、
一応の妥協が図られたことで、ユーロの分裂はない
という安心感が広がっているわけです。

しかし、問題は残されています。

ギリシャ国債が50%も減免されて、
金融機関の経営問題に発展するかな可能性があることです。

一部金融機関は、今回の決定を拒否する可能性もあります。

もちろん、それぞれの国が今回の決定を意味あるものにするため、
金融機関に対する支援を強めるものと思いますが、
金融機関にとって、今回の負担は大き過ぎると
異議を唱える声が聞こえて来そうです。

欧州の金融機関は、今回の合意で、
国の関わりが期待できるので、
それなりに安心感があります。

問題は、欧州以外の金融機関の行方です。

ギリシャ国債を大量に保有しているのは、
欧州の金融機関であることは間違いありません。

しかし、欧州以外の金融機関もギリシャ国債だけではなく、
欧州各国の債券を保有していることも間違いありません。

分散投資の観点から、世界中の債券を
保有してリスクヘッジをしているわけです。

欧州以外の金融機関が、どれだけ痛んでいるか、
正確な数字は見えていないのですが、
今回の大幅な債務の棒引きで、
想定外の損失を被る可能性もあります。

欧州と違って、国や地域をあげて、
金融機関の経営に深く関与する体制が出来ていない分、
思わぬショックが起きることには注意が必要だと考えています。

ユーロは、とりあえずの危機を乗り越えたとの見方から
買われていますが、あくまでも合意した段階であることだという、
認識を持つ必要があります。

ギリシャ債務問題も、最初の合意が守られていれば、
アイルランドポルトガル、イタリアに波及せず、
ユーロ危機もここまで深まらずに済んだはずです。

債務削減で合意は出来ても、実行出来なかったことが、
事態をこじらせた大きな要因です。

あれだけ時間をかけて決められたことを、
ギリシャが履行出来なければ、本当にユーロ圏存続が、
次のテーマになる可能性があります。

そして、リーマン・ショックを上回る、
システミックリスクが全世界を覆い、
世界の金融は取り返しのつかない
悲惨な状況になる可能性があります。

ギリシャは合意を確実に履行し、ユーロ圏諸国は、
その履行をサポートしていく必要があります。

合意は出来た、
後は実行あるのみだ、
というところです。

この中、米国が追加緩和を
行う可能性が一段と強まっています。

失業率が高水準で推移するなど、
いつまで経っても本格的な
景気回復の芽が出てきません。

単独の指標が良くなって、それで何もしなくて
良いという状態でないことは明らかです。

米国は来年、オバマ大統領が再選を目指す、
大統領選挙が行われます。

現職の大統領にとって、選挙で勝つには
景気の回復が最優先課題です。

そのためにも、FRBに対する圧力は
かなりのものだと考えています。

もちろん、政府がFRBに圧力を
かけることはありません。

FRBは、独立しており、政権の意のままに
金融政策を行うことは、ないことになっています。

しかし、FRBにとって景気を回復し、
オバマ再選を願う潮流が見えます。

共和党の大統領候補たちからは、
FRBに対する強い批判が巻き起こっています。

共和党が大統領選挙で勝利すれば、
金融政策は政治によって蹂躙される
危険性が出て来ています。

そうした動きを阻止するためにも、
今まで以上に景気回復を印象付ける必要があります。

結果的に、オバマ政権再選に利する、
金融政策を示さなければならないのです。

市場は、ユーロ問題が一応の決着を見せたこと以外に、
米国の追加緩和を見据えてドル売りを強めているようです。

人気投票は、ユーロ>円>ドルの順になっています。

予想レンジは、
ドル円が72.80〜78.80円、
ユーロ円が101.80〜109.80円、
英ポンド円が114.80〜124.80円、
ドル円が74.20〜83.20円。