ユーロ圏財政統合、独仏が一部加盟国による先行案を検討

複数の欧州連合EU)当局者によると、
独仏両国は、ユーロ圏の財政統合強化について
EU全加盟国の支持を早期に確保することは難しいと判断、
一部の加盟国が先行して財政統合を進める案を検討している。

ドイツ政府は当初、2012年末までにリスボン条約
一部改正を実現し、ユーロ圏加盟国の財政への監視を
大幅に強化する意向だった。

ただ独仏首脳は、ここ数週間のEU加盟国首脳との会談を通じ、
条約の一部改正でEU全加盟国の支持を取り付けるのは難しく、
支持を確保できる場合も、最終合意までに
1年以上かかる可能性があると判断。

市場ではイタリア、スペイン、フランスにも
危機が波及しているため、独仏の関係省庁は、(1)ユーロ圏加盟国のみの合意を目指す
(2)リスボン条約改正の枠外でユーロ圏中核国8〜10カ国前後が個別の合意を目指す
といった案を検討している。

独仏は、財政統合を強化すれば欧州中央銀行(ECB)による
危機対策の強化が可能になるとみている。

ただEU国際通貨基金IMF)の支援を受けているギリシャ
アイルランドポルトガルのほか、イタリアやスペインも、
現在の経済情勢ではドイツの求める財政健全化が難しいか、
そうした財政健全化を望んでいないのが現状という。

このため、独仏は、まず一部のユーロ圏加盟国だけで
財政統合を強化し、将来的に可能であれば条約改正を
目指す案を検討している。

具体的には(1)2005年にEU7カ国がEU条約の枠外で締結し、
その後EU5カ国とノルウェーが加盟したプリュム条約
(第3次シェンゲン協定)をモデルとする案、(2)1963年締結の
独仏協力条約(エリゼ条約)をモデルに独仏だけでミニ協定を結び、
他国の参加を募る案──などが検討されている。

ある関係筋によると、12月9日の
EU首脳会議前までの大枠合意が目標という。

当局者によると、こうした一部加盟国による先行統合案は、
財政統合強化に抵抗する加盟国に圧力をかける意味合いもある。

ただ実際にユーロ圏中核国8〜10カ国だけで財政統合を進めた場合、
ユーロ圏の分裂を印象付けることになり、一部の加盟国が
ユーロ圏の正式加盟国と見なされなくなる恐れがある。

一部の加盟国の発言権が低下し、将来的にギリシャなどが
ユーロ圏離脱を選択する可能性も指摘されている。