フィッチ、米国の格付け見通しを「ネガティブ」に変更

格付け会社フィッチ・レーティングスは28日、
米国の格付け「AAA」の見通しを「安定的」から
「ネガティブ」に変更した。

前週、議会の超党派委員会が財政赤字削減策で
合意できなかったことを受けた措置。

財政赤字削減で2013年までに「信頼できる計画」が
打ち出されなければ、格下げにつながるとしている。

同社は声明で「格付け見通しのネガティブは、
米国の財政を持続可能な軌道に乗せ、米国の格付けAAAを
確保するために必要で時宜を得た財政措置が近く講じられるという
信頼感が当社内で低下していることを反映している」と表明した。

フィッチは、議会超党派委員会の協議が決裂した際、
格付け見通しを変更する可能性はあるが、格下げの可能性は
極めて低いと表明していた。

今回の格付け見通し変更は広く予想されており、
市場に目立った反応はなかった。

フィッチのアナリスト、デビッド・ライリー氏は28日、
ロイターのインタビューに応じ、欧州債務危機の深刻化など、
同社を米国格下げに踏み切らせるような「深刻な負のショック」が
2012年に米国で起きる可能性はほとんどないとの見方を示し、
たとえ米国が一時的にリセッションに陥っても
格下げの理由にならないと述べた。

ライリー氏は「絶対と断言できないが、今後12カ月間に
当社が格付けを変更するような深刻な事態が起こるとは
想定していない」と述べ「たとえば欧州の危機が著しく悪化し、
その影響が波及したという理由で米経済が比較的短期間悪化したとしても、
われわれは一時的な現象と予想しており、必ずしも格付け変更に
結び付くわけではない」と語った。

格付けは、来年の選挙を経て2013年に発足する新政権が
数カ月以内に信頼に足る赤字削減策を打ち出すかどうかをみて
判断する方針。

「(2013年の)後半に入っても合意が見込めない情勢ならば、
(ネガティブの)見通しが格付け引き下げにつながる」とする一方
「合意が成立し、しかもそれが妥当で健全と思われ、
有効で債務水準の安定に寄与するとわれわれが判断すれば、
見通しを「安定的」に戻す可能性が高い」と述べた。

議会の超党派委員会は10年間で1兆2000億ドルの赤字削減を
目指していたが、協議は決裂。

この結果、2013年から同額の歳出削減が
自動的に発動されることになる。

米国の格付けをめぐっては、スタンダード&プアーズ(S&P)が
8月5日に、格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げた。

格付け見通しは「ネガティブ」。

ムーディーズ・インベスターズ・サービスは8月2日に
米国の格付け見通しを「ネガティブ」としたが、
格付けは「AAA」で据え置いている。

S&Pとムーディーズは11月21日、超党派委員会の
協議決裂について、格付けには直ちに影響がないと表明。

ただムーディーズは同月23日、自動的な歳出削減が
撤回されれば、何らかの措置をとる可能性があると指摘している。