アジア新興国・地域通貨建て債券市場、先行き予断許さず=ADB

アジア開発銀行(ADB)は29日公表したリポートの中で、
アジアの新興国地域通貨建て債券市場は底堅いが、
ユーロ圏危機の深刻化や世界景気の回復が不透明なことから、
先行きは予断を許さないとする見解を示した。

ADBは、アジア地域の先行きが
「明らかにダウンサイドに傾いている」と指摘。

欧州危機が需要と投資に打撃を与えているほか、
世界的にマーケットの不確実性が高まり、
ローリスク資産への避難を促しているとした。

また、2012年のアジア経済成長率が抑制され、
いくつかの市場では緩やかな高インフレが
発生しているとの見方を示した。

その結果、債券の人気は低下しているという。

中国や香港、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、
シンガポール、タイ、ベトナムを「新興東アジア」と定義。

新興東アジアの地域通貨建て債券発行額は7〜9月に計8290億ドルとなり、
前四半期比で7.6%増となったものの、前年同期比では2割近く落ち込んだ。

ADBは、新興東アジアを取り巻く世界景気の先行きが、
欧州の成長鈍化や米景気の回復の遅れを受け、
ここ数カ月で急速に悪化したと指摘。

ただ、9月末時点の新興東アジアにおける地域通貨建て債券発行残高は、
依然として前年比5.5%増の5兆5000億ドルに膨らんだ。
社債の伸びが寄与した。

ADBは「伸びが減速しているが、これはユーロ圏における
債務危機問題が影響しており、金融市場ではリスク回避姿勢が
強まっているほか、変動の激しい地合いを作り出している」と指摘した。

このほかADBは、地方政府による債券発行が
来年にかけて増加する可能性にも言及した。