アイルランド、EU新財政協定の批准めぐり国民投票を実施へ
アイルランドのケニー首相は28日、欧州連合(EU)の
新財政協定をめぐり、批准の是非を問う国民投票を実施する方針を示した。
国民投票を行うのは、EU加盟国でアイルランドが初めてとなる。
金融危機以降、アイルランドではEUへの支持が低下しており、
国民投票で財政協定が支持されるかは不透明となっている。
否決されれば、同国政府の長期的な資金調達見通しが不透明となり、
同国のユーロ加盟国としての姿勢に疑問を投げかけることになる。
1月のEU首脳会議で新財政協定に合意した後、ケニー首相は、
国民投票の必要性について法律顧問の助言を受け、議会に対し
国民投票の実施が必要との見解を表明した。
首相は議会で「投票を通じて国民に協定承認の是非を問う。
条約の承認は国益に適うと強く確信している」と明言し、
今後数週間に投票に向けた準備が行われるとした。
1月に実施された調査では、回答者の40%が賛成、
36%が反対、残りの24%は未決定となっており、
財政協定が僅差で可決される見通しであることが示された。
アイルランド国民は過去にEU条約の批准を否決し、
修正後の再投票で可決した経緯がある。
ただ今回の場合、EUの新財政協定は12カ国が
批准した段階で発効することから、アイルランド政府は
1回の投票で支持を得ることが必要になる可能性が高い。
こうした状況を踏まえ、アイルランドの
クレイトン欧州問題担当相は前月、新財政協定への参加が
国民投票で否決されれば、同国がユーロ圏にとどまることは
困難になるとの見解を示した。
ダブリン・シティー大学の政治学講師、エオイン・オマリー氏は
「(可決が)容易でないことは確かだ」とし、「過去何回かの
国民投票は結果がますます僅差になった上に、
EUへの支持は現在、一段と低下している」と指摘した。
アイルランドは、経済成長が2011年に
小幅なプラス成長となったほか、EU・国際通貨基金(IMF)の
支援策で設定された目標も達成しているという点で
ギリシャやポルトガルと異なり、国債利回りも昨年7月以来、
半分以下の水準に低下している。
しかし、EU新財政協定の批准を国民投票で否決すれば、
こうした流れは急速に反転する可能性が高い。
協定批准を否決すれば、アイルランドは
欧州安定メカニズム(ESM)の利用ができなくなる。
アイルランドは債券市場への年内復帰を目指しているが、
2014年には約200億ユーロの国債償還を控えており、
アナリストの間では、一部債務の返済に充てるため、
EUなどから新たな資金提供を受ける必要に
迫られるとの見方が大勢となっている。