ECB、インフレ高進リスクの発生時は利上げ実施へ=独連銀総裁

欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのバイトマン独連銀総裁は23日、
財政緊縮が遅延すればユーロ圏債務危機克服に向けた信頼性が
損なわれると述べ、財政緊縮化を推し進めることの必要性を訴えた。

また、過度に緩和的な政策を採用することで、将来的に金融と
物価の安定に対するリスクが増大する恐れがあると警告し、
ECBはインフレ率が目標を超えるリスクが発生した際は
利上げを実施するとの立場を示した。

同総裁は財政緊縮化について、「これまでに表明された
緊縮財政策と改革の実施が遅延した場合、政策担当者の
債務危機の根源に迫る能力に対する信頼が一層
損なわれることにならないだろうか」と疑問を呈し、
現在の状況下では、公的財政への信頼の欠落が
すでに成長に対する重しとなっていると指摘。

「財政の緊縮化は信頼を呼び起こし、経済成長を
後押しする可能性がある」と述べた。

その上で、「いずれにしても、財政緊縮化以外の
選択肢はほとんどない」とし、「財政緊縮化を前倒しして
実施することに対するリスクは誇張されている」と述べた。

物価水準については、先進国のインフレ率が
2012年は1.9%、2013年は1.7%とする
国際通貨基金IMF)の予想を超えたペースで
上昇する可能性があると警告。

「インフレについて(IMFほど)安心していない。
エネルギー価格の上昇に加え、コアインフレが
堅調に推移していることを踏まえると、物価は
IMF予想を超えて上昇する可能性がある」と述べた。

その上で、「ユーロ圏でインフレに対する上振れリスクが
増大した場合、金融政策担当者は必要なことを
実施しなくてはならない」とし、インフレ率が
目標を超えて上昇した場合、ECBは利上げを実施すると述べた。

また同総裁は、ECBの証券市場プログラム(SMP)を
ユーロ加盟国の政策措置に結び付けることがあってはならないと述べた。

ただ、債券買い入れが必要となった場合、ECBは買い入れを
実施するべきで、必要に応じて協議することができるとの立場を示した。

ニューヨークでの講演後の質疑応答で述べた。

同総裁は、ECBのSMPは、特定の国に利益を
与えるためのものでも、罰を与えるためのものでもないとしている。

ギリシャ、競争力回復に向けユーロ圏離脱を=独シンクタンク所長
ドイツIFO経済研究所のハンスウェルナー・ジン所長は23日、
ギリシャがユーロ圏にとどまるなら、経済競争力を強化する
能力は著しく制限されるとの見解を示した。

所長はニューヨークでの講演で「個人的には、ギリシャ
ユーロ圏にとどまりながら競争力をつける可能性はないと
確信している」と指摘。

ギリシャをユーロ圏にとどまらせれば、高水準の失業が
続くだろう。だがユーロ圏を離脱すれば、急激に回復する」
との見方を示した。

ギリシャと同様に、歳出削減や増税に直面する
他のユーロ圏諸国を取り巻くリスクについても言及。

「政治家が何と言おうと、一部の南欧諸国に必要とされる
水準まで賃金や価格を引き下げることは不可能」との考えを示した。

また3年物資金供給などの欧州中央銀行(ECB)の
流動性支援措置については、議会を迂回し、
いずれユーロ圏共同債の発行につながると指摘。

そうなれば金利リスクを取り除き、ユーロ圏諸国は
債務返済や改革実行を行わずに、市場金利を下回る水準での
借り入れが可能になるとの見方を示した。

その上で「一律金利は、欧州での誤った
資本配分の再発を招く」と述べた。