物価上昇率1%展望できる時期は2014年度含む=白川日銀総裁

日銀の白川方明総裁は27日、金融政策決定会合後の会見で、
資産買い入れ基金の増額による追加金融緩和を決めた理由について、
経済・物価に明るい動きが出ている中で日本経済が持続的な成長に
復帰することを確実にするため、と説明した。

その上で今後の政策運営について「毎月、金融緩和を
やっていくわけではない」としながら、強力な金融緩和を推進し、
デフレ脱却に向けて適切に政策運営していくと語った。

日銀が事実上のインフレ目標としている消費者物価の
前年比上昇率1%に達する時期について「2014年度も含む」
としたが、1%が見通せるまで強力な金融緩和を推進していく
とする日銀の時間軸に対する考え方は
「まったく変わっていない」と強調した。

日銀は今回公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、
前回1月の中間評価と比べて景気・物価いずれも上方修正したにも
かかわらず追加緩和に踏み切った。

白川総裁は「景気・物価情勢が改善しているなか緩和強化は
多くないが、過去になかったわけではない」と指摘。

「経済・物価の面で起きているよいモメンタムを大事にし」、
「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復する蓋然性を
さらに確実にしたい」ため、追加緩和に踏み切ったと説明した。

物価については「大きな流れが重要。2009年夏に消費者物価指数
前年比でマイナス2.4%と近年の底を付けて以来徐々に縮小し
本日発表された3月の消費者物価指数はプラス0.2%だった。
購入頻度の高い、財・サービスは徐々に上がってきている」と指摘した。

日銀が現在進めている資産買入基金による「包括緩和政策」を
打ち出した2010年10月以降、基金の規模を「1年強で35兆円、
長期国債で25兆円と大変な増額を行ってきている」ことを受け、
「経済に前向きなモメンタムが少しずつ働き始めている」との見方を示した。

今後は景気の「上下両方向のリスクに十分注意を払い、景気・物価の
展開や金融政策の効果を冷静にじっくり見極めたい」とした。

日銀は2月に「物価安定の目途」の形で物価上昇率1%が
展望できるまで金融緩和を続ける姿勢を明確にしているが、
総裁は、展望リポートで13年度まで1%が展望できないため
緩和したわけでない、と述べた。

日銀は包括緩和政策を打ち出した2010年10月、
企業向け貸出の多くが2年以内との根拠で、
買い入れ金融資産の年限を2年以内としていた。

今回年限を3年に延長した点について、
企業の資金調達を考えると合理的判断、と述べた。

米国の金融債務は家計向けの30年近い不動産担保貸付が多く、
社債も発行期限が平均13年と長いため
「長い金利への働きかけが有効」と指摘。

「日本では期間の長い調達は多くないため従来から
3年以下を意識し政策を行ってきた。それぞれの国の置かれた
金融構造に即してもっとも有効な金融政策手段が必要」と強調した。

度重なる追加緩和で日銀の国債買い入れが増額を続けているが、
総裁は「買い入れは金融政策の目的実現のため、
財政ファイナンスが目的でない」、「財政ファイナンス
行わないことを信用してほしい」と強調。

その趣旨を明らかにするために、通貨供給のための
国債買い入れとは別の「基金という分別管理をし、
国民や市場参加者が監視できるようにしている」と説明した。

日銀は、通貨供給のため買い入れる長期国債の残高をお札
(日銀券)の発行額以下に抑える自主規定を定めているが、
総裁は「今年末か今年度末には長期国債保有額が
銀行券発行残高を上回る」との見通しを明らかにした。

一方、「国債の買い入れが大量にのぼると、日銀の意思とかかわらず、
『財政ファイナンスでないか』との見方が出ることは一般論としては
あり得る」とし、「そうした事態を避けるためにも財政健全化に向けた
取り組みをしっかりと進めてほしい」と述べた。

総裁は3月以降の2度の訪米の際に講演で金融政策の副作用について
強調しているが、「世の中には効果だけあってコストがない
政策・手段はない。副作用あるから金融緩和するべきでない
というわけでなく、副作用が小さくなるよう構造改革の努力を
してほしい」との趣旨だと説明した。

今後は、国債買い入れのペースなど最適なスピードを意識し、
経済・物価の展開や金融政策の効果を冷静にじっくり見極め、
政策運営する姿勢を示した。

また1%の物価上昇を達成した後の政策に
ついて語るのは時期尚早と述べた。

日本経済の現状については、横ばい圏内だが持ち直しに
向かう動きが明確になりつつある、との見方を示した。

展望リポートの物価見通しには、「消費税率の引き上げは
見通しに織り込んでいない」と述べた。

中期的な物価をみる上で、中国の賃金上昇や新興国
経済発展に伴う資源価格上昇の影響が一つの注目点で、
同日の会合で指摘があったことを明らかにした。