外準運用に新手法、預金削減しリスク軽減
財務省が外貨準備の運用で新たな手法を拡大させている。
為替スワップを使って保有するドルなどの外貨で円を調達、
政府短期証券(FB)の償還資金に充てる試みだ。
運用の多様化・効率化の一環だが、民間金融機関に積み上がった
預金を減らすことで、金融システムが不安定化した際に、
外貨準備がき損するリスクを軽減させることも狙いとみられる。
外貨準備で通貨スワップ取引を開始したのは昨年1月。
当初は10億ドル程度の少額取引だったが、昨年8月以降に
相次いだ大規模介入でドルが大きく増えたことを契機に増加し、
今年4月には555億ドルと過去最大の取引高となった。
4月末の外貨準備高1兆2895億ドルから見れば5%にも満たないが、
円換算すれば約4.4兆円の巨額取引だ。
通貨スワップを本格導入した狙いは、金融機関に
大きく積み上がった預金の圧縮にある。
昨年10月に1日で8兆円超を投じた史上最大の介入を含め、
相次ぐ大規模な円売り介入で外貨準備にはドルが急増。
100兆円超へ膨らんだ外貨準備の効率活用を求める声が
根強いにもかかわらず、世界的な超低金利で金利収入が
ほとんど見込めない預金は、昨年11月末段階で453億ドルと
2年ぶりの高水準へ積み上がっていた。
同時に、リーマンショックで顕在化した民間金融機関の
信用リスク問題も、通貨スワップという「新たな活路」を
後押しする一因となった。
ひとつの金融機関の資金繰り問題が、銀行間取引を通じて
瞬く間に世界に広がる金融システムリスクが再発した際、
手元に資金を確保できる通貨スワップのほうが、
民間金融機関への預金より「安全性が高い」
(国際金融筋)との判断だ。
通貨スワップの拡大策は、為替介入の
余力を高める可能性も秘める。
調達した円でFBの償還を進めれば、追加発行が抑制できるため、
論理上は為替介入の限度額にあたるFBの発行枠と発行残高の差額、
いわゆる「介入枠」を維持し、広げることもできる。
しかし、スワップ取引は短期資金の運用手段であること、
国庫の資金繰り状況は日々変化することなどから、
財務省はそうした見方に否定的だ。
現在、為替介入の原資となるFBの発行限度額は195兆円で、
今年3月末の外国為替資金証券の発行残高は115兆円。
政府には約80兆円の介入余力が残されている。