JPモルガン巨額損失でCIO辞任、米大統領は規制改革の必要性強調

JPモルガン・チェースは14日、 ヘッジ戦略の失敗で
巨額の損失を出した問題を受け、アイナ・ドルー最高投資責任者
(CIO)が辞任すると発表した。

後任にはグローバル・フィクストインカム部門責任者の
マット・ゼームズ氏が就任する。

ダイモン最高経営責任者(CEO)は、今後数カ月で
問題のポジションを解消するのに伴い、損失は30億ドル超に
達する可能性があると明らかにした。

一方、オバマ大統領は、小規模な金融機関で同じような問題が
起きた場合、政府の介入が必要になる可能性があるとの認識を表明。

米連邦準備理事会(FRB)は、JPモルガンが他の部門でも
同じようなトレーディング戦略をとっていないかどうか
調査していると明らかにした。

この問題をめぐっては米証券取引委員会(SEC)が
調査に乗り出しているほか、米上院でも公聴会が開かれる予定。

複数の関係者はロイターに対し、取引に関わったドルー氏ら
幹部3人が辞任する見通しだと話していた。

残る2人の幹部、アキレス・マクリス氏と
ハビエル・マルティン・アルタホ氏の進退について
JPモルガンは言及していない。

JPモルガンはまた、トレジャリー・アンド・セキュリティーズ・サービス
(TSS)グループの責任者であるマイク・カバナー氏が巨額損失問題への対応を
統括する幹部チームを率いると発表した。

ドルー氏は30年にわたりJPモルガンに在籍。

同行幹部によると、ドルー氏が率いたチーフ・インベストメント・オフィス
(最高投資戦略室)は債券の信用度に絡むデリバティブポートフォリオ
運用に失敗した。

かつてJPモルガンで自己勘定取引を担当していたある
ヘッジファンド・マネジャーはJPモルガン
チーフ・インベストメント・オフィスについて、
独自にポジションを取り、ごく限られた上級幹部しか
その大規模かつ複雑なエクスポージャーについて
知らされていなかったと指摘。

チーフ・インベストメント・オフィスは自己勘定取引部門とは
完全に切り離され、いずれの部門も互いの帳簿には関知しなかったとし、
こうした慣行はバランスシート・リスクの縮小に対する
JPモルガンのコミットメントと相容れないものだったと述べた。

さらに「すべての活動はニューヨークに報告され、ニューヨークが
各戦略に資金を配分した。こうした決定がロンドンで
行われなかったことは間違いない」と述べた。

ダイモンCEOは10日に損失発生を明らかにした際、同行として
調査を続けており、関与した人物には処分を課す方針を示していた。

一方、オバマ米大統領は14日、ABCの番組「ザ・ビュー」に出演し、
JPモルガンの損失問題は米金融規制改革の必要性を示していると指摘。

JPモルガンは、資産運用に最も優れた米銀の1行で、
トップのジェイミー・ダイモン氏も非常に有能なバンカーだが、
それでも、彼らは20億ドル以上の損失を出した。すべての詳細は
まだ分かっておらず、調査が行われるが、このことは、われわれが
なぜ米金融規制改革法案を通過させたかを示している」と語った。

FRBのスポークスマンは、JPモルガンがそれ以外にも同じような
トレーディング戦略をとっていないかどうか調査しているとともに、
JPモルガンリスク管理手法についても調査していることを明らかにした。

ただ、FRBスポークスマンは、ストレステストの結果を見ると、
JPモルガンはより大幅な損失を被っても、支払能力を
維持できるとの認識を示した。

通貨監督庁(OCC)も損失について調査していると発表。

OCC報道官は声明で「今回の予想外の損失につながった特定の取引や、
リスク管理のプロセスをめぐる詳細を解明するため、
OCCは銀行関係者や、そのほかの規制当局の担当者と
連携している」としている。

一方、損失が同行の安定を脅かすとは、
考えていない、と強調した。

また、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは14日、
JPモルガンの巨額損失は、同行の社債保有者にとりマイナスとの認識を示した。

ムーディーズのアナリスト、ピーター・ネルビー氏は、格付け見通しに
関する週報で、巨額損失は同行の社債保有者にとり
「クレジットネガティブ」と指摘した。

ムーディーズJPモルガン
信用格付けを「Aa3」としている。

同行は、ムーディーズが現在、格下げ方向で
見直しを行っている国際的な金融機関の1つ。

フィッチ・レーティングは11日、巨額損失を受け、
JPモルガンの信用格付けを「AAマイナス」から
「Aプラス」へ1段階引き下げた。

またS&Pは、JPモルガンの格付け見通しを
「安定的」から「ネガティブ」に引き下げている。