ユーロ圏諸国、完全な経済統合に向けた行程表必要=欧州委員長

欧州委員会バローゾ委員長は29日、ユーロ圏諸国は、
ユーロ圏の将来を投資家に保証するため、経済の完全統合に
向けた行程表を策定するべきとの見解を示した。

委員長は講演で、経済統合が実現するのはまだかなり先であっても、
ロードマップを示すことは重要と指摘。

「流れと目標を定めることは非常に大切だ。ユーロ圏への
投資に対する信頼という意味でも非常に重要だ。完全な
経済・通貨統合に向けた行程表を含む、野心的かつ
構造的な手法を、われわれは支持していく」と明言した。

EUが銀行救済法案を提示へ、清算基金の相互融資など柱
欧州委員会は、経営危機に陥った銀行を欧州連合EU)加盟国が
相互に救済することを義務付ける法案を6月6日に提示する。

法制化されれば、EUの金融統合に向けた一歩となる半面、
英独など一部の国からの反発も予想されている。

背景には、スペイン銀行セクターの問題やギリシャなどにおける
預金流出の拡大リスクを受けて、先送りされていた破たん銀行の
取り扱いをめぐる法整備に新たな切迫性が生じていることがある。

法案は、危機に陥った銀行を管理下に置き解体するとともに、
損失を債券保有者に負わせる内容になっており、地元当局に
「強力な介入権限」を認めるという。

実現すれば、欧州全体での銀行監督及び清算コスト負担に
向けた一歩となり、欧州中央銀行(ECB)が求める
「銀行同盟(banking union)」の柱となる。

法案は、「大きすぎてつぶせない」状態まで銀行が
肥大化するのを防ぐと同時に、銀行破たんによる
金融市場の混乱を回避する狙いがある。

また納税者が支援を強いられることがないよう、
債券保有者にも損失負担をさせることで、
経営危機に陥った銀行の資本増強を行うことも
目的としている。

法案では、毎年実施する銀行への課税から預金の1%相当を
徴収することで、各国に銀行破たんに備えるよう指示している。

徴収した資金は緊急時に破たん銀に対し
融資や保証といった形で提供される。

銀行の清算・支援に向けたEU基金の即時導入を
ECBは望ましいと考えているが、法案には盛り込まれていない。

代わりに各国基金の結びつきを強化することが提案されている。

例えば、仏英両国で事業を展開する銀行が破たんの
危機に直面した際には、
英国の救済基金からフランスの基金への貸し付けを
義務付けるといったことが
可能になり、EU基金創設に向けた布石ともなる。

ただ、各国基金の共有に向けた厳格な規則は、
英独などの反発を招く公算が大きい。

英国は、銀行への資金提供をめぐる決定権は欧州委ではなく
英政府が握ると主張しており、ドイツでは、
スペインなどよりぜい弱な国の銀行支援のために
自国の資金を活用することへの抵抗が強いためだ。

欧州委は草案で「効果的な清算制度においては、
納税者に破たん銀行のコストを負担させることを
回避すべきであり、大規模かつシステミックな機関は、
金融の安定性を損なうことなく清算されるべき」と指摘。

「加盟国は確実に、EU内の他国の支援制度への融資を
自国の支援制度に義務付けるようすべき」としている。

また最新の草案では、債権者による
損失負担の範囲を拡大した。

銀行が経営危機に陥った場合、これまでは資本増強の
コストを負担してきたのは主に株主や納税者だった。

最新の草案では、銀行の株主資本で
損失処理が不十分な場合は、
従来想定してきた特定の債券だけでなく
「すべての負債」について
損失負担を債権者に課すとしている。

その上で、銀行の負債のうちおよそ10%は救済時に
損失負担が可能なものとし、監督当局の
損失義務付け権限は、
2018年1月以降、既発・新発債の両方を
対象にすべきとしている。

法案にはEU加盟27カ国及び欧州議会の承認が必要で、
独英の支持が得られなければ、承認される公算は
小さいとみられている。

事情に詳しいあるEU高官は「多少の
修正余地は残されているが、
加盟国間の相互協力に向けた取り決めは
盛り込まれる」との見方を示した。

草案は、EU及びユーロ圏の統合深化に
向けた方策を模索することで
合意した前週のEU首脳会議の後に、
最終的に取りまとめられた。

法案は早ければ2014年にも実施される公算があり、
法制化されれば、欧州委は銀行清算に関し
「さらに統合を強化した枠組み」について
模索するとしている。