欧州発の下振れリスク強く意識、政策でサプライズ長続きせず=日銀総裁

日銀の白川方明総裁は24日、大阪市内で講演し
「欧州問題が深刻化し世界経済の一段の下振れに
つながるリスクを引き続き最も強く意識」と強調した。

一方、国内は「内需が予想を上回って堅調」
として景気回復シナリオを維持した。

円高是正のため「劇場型金融政策」を求める会場の声に対して
「サプライズは長続きしない」として否定的な姿勢を示した。

白川総裁は講演で欧州債務問題が
「世界・日本経済に最大のリスク」と強調。

最悪のシナリオが「顕現化しなくとも意識されると
投資に悪影響を与える」と懸念を表明した。

スペイン国債利回りが「6%台前半と2010年以降の
平均成長率の約1%をはるかに上回る水準で
高止まっている」ことも懸念。

欧州問題は「解決にかなり長い時間がかかり、
世界経済は欧州債務問題に伴うリスクと
しばらく共存していかざるを得ない」と覚悟を求めた。

この結果、中国の対欧輸出減少で「日本の中国を通じた
間接的な輸出の減少は大きい」として、「海外経済は
減速局面を脱しておらず、外需はやや弱めの動き」と総括した。

円高について「景気への悪影響や関西での
対韓国ウォンでの問題意識は十分認識している」と語った。

欧州問題による先進国の長期金利低下は「根強い円高圧力を
受けている日本には景気の下押し圧力」とし、円高の原因も
リーマン・ショック後の海外金利低下による巻き戻しと
欧州問題による市場動揺が理由」と説明した。

一方、国内景気については堅調な内需を背景に、
先行きも「緩やかな回復経路に復していく」とのシナリオを維持。

2カ月連続でマイナスが続いている消費者物価についても
「ガソリン価格の下落で当面ゼロ%近傍で推移するが、
2013年度には0%台後半、そのあと1%に遠からず達する」として、
上昇に転じるとの見方を据え置いた。

会場では開会のあいさつを行った大阪商工会議所佐藤茂雄会頭が、
円高是正のため「各国中銀の緩和競争に負けないよう、
劇場型金融政策で市場に大きなインパクトを与えて欲しい」と要望した。

白川総裁は「普段から金融政策が理解されていればサプライズはない。
驚かせるより、よく理解されるのが大事」と反論した。

資産買入基金については「残高目標の引き上げに
注目が集まりがちだが、目標への積み上げで
緩和効果が強まっていく」とし、安易な追加緩和に
否定的な従来見解を繰り返した。

また「成長を伴わない物価上昇は生活水準が上がらず、
多くの国民も望んでない」と指摘、デフレ脱却には
金融緩和のみならず成長戦略が重要との見解を強調した。

今後の緩和手段として「為替介入目的の外債購入は
日銀独自の判断では難しい」とした。

講演後の記者会見では、先進国の長期金利について
「水準自体へのコメントは差し控えたい」としつつ、
「安全資産としての欧米国債買い入れは少しひところより
後退している」とし、下がりすぎた長期金利
反転上昇しつつあるとの見方を示した。

中国経済について「目先成長テンポが鈍化するが、
徐々に成長ペースは高まる可能性が高い」と述べた。

一方、「農村部から都市部への人口移動の減少と
少子高齢化(という2つの成長力低下要因)が、
日本と異なり)短い時間の中で起こっており、
うまくソフトランディングできるか課題」と警戒した。

竹島問題を受けた日韓通貨交換(スワップ)協定に関する措置と
市場への影響については「コメントは差し控えたい」としたが、
「日本と韓国の金融市場が足元、何か不安定化する動きがあるとは
認識していない」と述べた。