必要なら「果断かつ柔軟」に対応、景気回復は半年後ずれ=山口日銀副総裁

山口広秀日銀副総裁は24日、都内で講演し、
2012年度前半と想定していた日本経済の
回復時期について、半年程度の後ずれは
避けられないとの認識を示した。

日銀は9月の金融政策決定会合でこうした判断を
踏まえて追加金融緩和に踏み切ったが、今後も
経済・物価情勢に応じて、必要と判断すれば
「果断かつ柔軟」に対応すると語った。

山口副総裁は日銀が9月の決定会合で追加金融緩和を
決めた背景について、世界経済の下振れが「私どもを含め
大方の想定を超えるものであった」と説明。

「これまで想定してきたシナリオが後ずれ、
あるいは下振れていると判断した」と述べた。

日本経済が緩やかな回復経路に復帰する時期については、
当初の想定よりも「概ね半年程度」後ずれするとの見通しを示した。

会合では「政策対応を先延ばしすることに合理性はない」
と判断、追加緩和で日本経済が持続的な成長経路に
復していく軌道に戻すことを狙ったと説明した。

その上で、基金増額によって「(金融資産の)
積み上げペースが加速」し、「着実な積み上げを通じて、
今後とも間断なく金融緩和を進めていく」と強調した。

政策の検討に際しては「リスク性資産を買うことも考えた」が、
「投資家の不安心理やリスク回避姿勢から、リスク・プレミアムが
拡大するような状況にはない」と考え、増額を見送ったという。

日銀の国債買い入れ規模はさらに膨らむが、山口副総裁は、
日銀による財政ファイナンスと受け止められることを懸念。

日銀の信頼が損なわれて長期金利が上昇し、
金融システムや実体経済を不安定化させることから、
「今後も財政ファイナンスは行わない」と語った。

日銀の決定は欧州中央銀行(ECB)と
米連邦準備理事会(FRB)が追加緩和を
決めた後だったこともあり、一部では
欧米追随との指摘もある。

副総裁は「他国が政策を行ったから自国も
行うという考え方はとっていない」と説明。

日銀の金融政策運営について「経済・物価の見通しと
リスクを点検し、必要と判断される場合には、
果断かつ柔軟に対応する」と強調した。

日本経済のデフレ状態が続く中、円高是正に向けて
金融政策で直接為替相場に働きかけるべき、
との声があることについては、日銀法の観点などから、
「金融政策を用いて直接的に為替相場に影響を
与えることは一切考えていない」と言明。

一方で、「為替を通じた日本の景気、物価への影響を見定め、
必要なら金融政策を行う」と述べ、経済・物価への影響が
前提になると語った。

このほか山口副総裁は、世界経済について
「欧州債務問題の影響により、各地で製造業を
中心に企業マインドが慎重化しており、
減速の度合いをやや強めている」とし、
減速状態からの脱出も「タイミングは
後ずれしている」と述べた。

中でも欧州については「景気後退局面にある」とし、
当局の政策対応で金融危機が発生するリスクが
後退していると述べる一方、「コア国への波及など
実体経済の低迷が続くリスクは引き続き大きい」
と警戒感を示した。

また、中国経済は幅広い分野で在庫調整圧力が
強まっていると指摘するとともに、「リーマンショック」後の
政策対応が物価や不動産価格の上昇につながったことによる
当局の慎重姿勢や、構造的な過剰投資の中で「需要と供給の
バランスが崩れやすい」ことなどを課題に挙げた。