金融政策に「一段の工夫」余地=8月日銀会合議事要旨

日銀が24日に公表した8月8、9日開催の
金融政策決定会合の議事要旨では、何人かの委員が、
海外経済の減速が長期化するリスクを指摘し、
その場合には日本経済の回復時期が後ずれする
可能性に言及していたことが明らかになった。

日銀は9月18、19日の会合で、景気シナリオの下方修正し、
追加の金融緩和措置に踏み切っている。

金融政策運営では、デフレ脱却に向け、為替相場への
働きかけなど「一段の工夫」について一部の委員が発言している。

8月会合では、景気判断について「緩やかに持ち直しつつある」とし、
先行きも「国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した
状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していく」
との見解で委員らが一致した。

もっとも、欧州債務問題がさらに深刻化し、
「市場の動揺、ひいては世界経済の一段の
下振れにつながることが、最も強く意識しておくべき
リスク要因」との認識も共有。

ある委員は、欧州問題の影響が「予期せぬスピードで
拡大していく可能性もある」とし、「過小評価しないように
注意する必要がある」と訴えた。

海外経済の不確実性が大きい中で、何人かの委員は
「海外経済が減速した状態が長引くリスクは小さくない」とし、
減速長期化によって「日本経済が緩やかな回復経路に復していく
タイミングも後ずれしかねない」と懸念を表明した。

物価をめぐる先行きについては、何人かの委員が
需給ギャップの改善ほどには、実際の物価が
上昇していかない可能性に注意する必要がある」と指摘。

複数の委員は、賃金の動向を踏まえて「物価の
先行きについては慎重な見方をとらざるを得ない」
と発言している。

海外経済に関しては、何人かの委員が、グローバルに
企業の景況感が悪化していることもあって「減速した状態が
やや長引いている」との認識を示し、1人の委員は
ユーロ圏経済の停滞が続く中、「海外経済の回復は、
米国や中国の動向次第の面が大きい」と指摘した。

このうち中国経済について大方の委員は、回復時期が
後ずれしているものの「徐々に回復傾向が明らかに
なっていく可能性が高い」としたが、何人かの委員は、
中国当局の慎重なスタンスが「減速局面を
長期化させる可能性」に言及している。

また、国際金融資本市場に関して、複数の委員が
米独の長期金利が過去最低水準で推移しており、
「日本の長期金利にも影響するため、注視していく
必要がある」と今後の動向に警戒感を示している。

これらの点を踏まえた金融政策運営では、
極めて緩和的な金融環境が活用されておらず、
複数の委員が「金融面からの後押しだけでは
不十分」とし、デフレ脱却に向けて成長力の
強化が不可欠と改めて指摘した。

一方、ある委員は、日銀の包括的な金融緩和政策の
取り組みでもデフレから脱却できていないとし、
為替相場への働きかけなど、インフレ期待を
高める一段の工夫が必要」と表明。

何人かの委員は、欧州問題などを起点に大きなリスクが
顕在化した場合には「様々な選択肢をあらかじめ
排除することなく、適切に対応できるよう備えておく」
必要性を指摘し、複数の委員は「(日銀が)適切な対応を
果断に行う用意があることをしっかりと
情報発信していく」ことの重要性を強調した。