IMF世銀総会が東京で開催、けん引役不在の世界経済を議論

国際通貨基金IMF)・世界銀行総会が48年ぶりに
東京都内で開かれる。

関連行事は9日から始まり、総会と国際通貨金融委員会
(IMFC)は12日〜13日に開催される。

欧州危機と中国経済減速でけん引役が不在となりつつある
世界経済の展望について、11日開催される先進7カ国(G7)
財務相中央銀行総裁会議を含め、活発な議論が行われる見通し。

9、10日には「防災と開発に関する会合」が仙台で開かれ、
日本は東日本大震災からの復興をアピールする。

欧州は債務問題の抜本解決への道筋が見えず、
リーマンショック後の世界経済けん引を期待された
中国も過剰投資の反動が本格化、米国は来年初め
「財政の崖」に直面する可能性がある。

日米欧の先進国は中央銀行の金融緩和への依存度を
高めつつあるが、金融緩和は食糧価格の高騰などを通じ
新興国に対してインフレを輸出・転嫁する側面がある。

世界経済のけん引役が不在となる中、先進国と新興国
利害が複雑に絡み合い、どのような議論が展開されるか注目される。

総会には188の加盟国の財務相中央銀行総裁のほか、
経済協力開発機構OECD)や世界貿易機関WTO)などの
国際機関、学会や民間金融機関のトップらが集まり、
世界経済の安定や途上国支援について協議する。

参加者は関係者を含み1万人から2万人とみられる。

民間を含め200以上の会議などイベントが予定されている。

年次総会は通常、米ワシントンのIMFと世銀の本部で
行われるが、3年に一度は他の加盟国で開催される。

今回の開催地は当初エジプト・カイロの予定だったが、
民主化を求める政変で難しくなり、当時原発事故で
外国人観光客が激減していた日本が「震災から復興する姿を
見てもらうため」(政府筋)手を挙げた。

日本での開催は東京オリンピック
行われた1964年以来、48年ぶり。

IMFは9日、世界の経済見通しを報告、南欧諸国の
財政悪化問題や欧州経済の低迷が中国など新興国
波及していることで、7月時点の見通しを下方修正する見込み。

9〜10日の仙台会合では、新興国の急速な経済発展で
災害に対して脆弱な都市化が進んでいるのを踏まえ、
日本の震災の経験に基づいた防災に関する議論が行われる。

12日に総会が行われ、13日までの
IMFCではIMF改革が議題となる。

12日午前の総会の本会議では
ラガルドIMF専務理事らが演説。

同日夜には野田首相主催のレセプションが開かれ、
日本酒などがふるまわれる。

IMF改革は、先進国が主導権を握ってきた組織運営を
見直し、新興国の出資額や理事の割り当てを増やすのが柱。

出資比率では中国が日米に次ぐ3位に浮上するほか、
インド、ロシア、ブラジルも10位以内に入る。

ただ出資比率の見直しの条件となる理事会など組織改革は、
投票権換算で85%以上の加盟国の同意が発効の条件。

IMFは東京総会までの実現を目指して
各国と調整を進めてきたが、事実上の拒否権を
握る米国などの動きで承認のめどが立たない。

11日夕のG7財務相中央銀行総裁会議では、
欧州債務危機への対応や急減速する新興国
踏まえた世界経済の成長戦略などについて意見が交わされる。

日米財務相会談も実施される見通し。

11日はミャンマー民主化を支援し、国際社会への
復帰を促すと同時に同国の延滞債務問題を
解決するための会合も開かれる。

資源に恵まれ歴史的に日本と関係の深い同国は、
新興国経済が減速するなかで新たな成長フロンティアと
期待されており、日本政府の今回会合への期待は大きい。

期間中1〜2万人の参加者が訪日するのにあわせ、
官民を挙げた観光客の誘致事業も予定されている。

三井不動産などが参画する任意団体
日本橋おもてなし実行委員会」は日本橋の芸者と
東京湾を遊覧する屋形船ツアーを実施する。

財務省は、会場周辺の飲食店や小売店で使える
電子クーポン「SDR」を発行、食事代などを
値引きするほか記念品を渡す。

クーポンの名称は、世界共通通貨の候補として
取り上げられることもあるIMF
特別引き出し権「SDR」になぞらえた。

参加者の希望を踏まえ9日には日銀視察も行われ、
20数カ国の中銀総裁などが参加する予定。

東京五輪が開催された1964年のIMF・世銀総会では、
当時の日銀側総会担当者がルワンダ中央銀行の総裁に
抜擢された経緯があり、政府・日銀関係者は2度目の
東京開催がどのような形で国際貢献につながるか注視している。