円売り安心感、いつまで続く?

今週の為替相場は、一義的には
日本の総選挙の動きが気になります。

公示日直前まで、各党の合同に向けた
動きが続くものと見ています。

今回の選挙では、民主党は解党的な
ダメージを受けるものと思います。

政権交代は出来たのですが、あまりにも
政権運営の稚拙さが見えすぎました。

いくら不慣れとは言え、あれでは日本国の
屋台骨を折ってしまう、そういう印象が
国民の中では強かったのでしょう。

これに対し、自民党は安部総裁が日銀に対する、
恫喝まがいの発言を行ってから株価は上昇しています。

円安も急速に進み、安部さんは市場が
歓迎していると思われている感じです。

では、自民党が選挙に圧勝するのでしょうか。

今になって安部さんは発言を修正、あるいは
「そんなことは言っていない」と、各党から
批判された発言を否定、真意は違うと防戦しています。

果たして、言葉の軽い責任者を抱える
政党に国民は投票するでしょうか。

比較多数は取れるのでしょうが、
自民党が大勝することは難しいでしょう。

日銀に対する圧力も後退を
余儀なくされる感じです。

安部さんは一度は首相の座に就いた人です。

その人が、日銀に対する禁じ手を
明言しているのですが、首相在任時に
何を学んだのでしょうか。

この議論では、野田首相民主党幹部、
あるいは他党の幹部の発言の方が理解できます。

市場は、安部さんの発言をきっかけに
利食いを行っているような気がします。

考えてみたら、今年は総じて
円買いが強まった印象があります。

ユーロ圏の財政赤字問題は、
ユーロの継続的な売りに繋がりました。

ギリシャだけに止まらす、スペイン、ポルトガル
イタリアなど、次々と市場の標的に上がりました。

最近では、やっとフランスが格下げられましたが、
随分遅い判断だと思います。

ただ、売られ続けたユーロは、
今は買い戻されています。

悪い材料に対する反応は鈍く、
今は買い戻される流れになっています。

年末を意識した動きなのでしょうか。

実は、フランスの格下げに続いて、
ドイツでは今年第4四半期のGDP
マイナスに落ち込む予想が出ています。

以前だったら、これを材料にユーロ売りが
強まっていましたが、今はその材料を
見極める動きになっています。

まずマイナスという数字が出て、
その後で動こうとする姿勢が見受けられます。

まずは、売ったユーロを買い戻して、
利益を確定させて、次の材料を
模索するという感じです。

ドルも年末を睨んだ利食いの動きや
利益送金の動きで、ドル買い需要が
あるようです。

これまで相対的に買われていた円を売る動きが
強まったのはこれらが要因だと思います。

日本で根強い円安期待を実現出来たわけだから、
この円安を力付くで押さえようとする動きはなく、
円売り安心感が市場にはあったのです。

円がこのまま一本調子で
売られた場合、当局はどうするでしょう。

何もしないで、円安が進んでいるから、
それを放置するのでしょうか。

一気に85円を超えて90円に迫るような
動きを見せた場合、どうするのでしょう。

これ幸いと見逃すのでしょうか。

円を買う必要のある人たちに、円を買うのを
見逃すように囁きかけるのでしょうか。

これまで、当局は、水準で判断している
わけではないと説明してきました。

円高も、円安も、そのスピードが
問題なのだ、と話してきました。

当局が容認できるレンジは、
1カ月で5円程度と指摘して来ました。

今回、円が異常に高かったからと言って、
急激な円安を容認するのでしょうか。

もし容認したら、日本は為替相場の乱高下に
介入しない国になってしまいます。

日本では、円高ばかりが問題にされますが、
国際的には為替相場の乱高下には協調して
対応することになっています。

日本は円高に対しては、単独で、協調の枠外で
対応するが、円安は見逃す、不公正な為替政策を
有する国という、レッテルを貼られてしまいます。

もともと日本は、為替不公正国と見られていた節も窺えます。

市場も、世界各国も、日本の所作を注意深く見詰めています。

となると、日本は急激な円安(為替相場の乱高下)には
何らかの対応をとる必要があります。

それが出来るか、出来ないかが、国際金融市場で、
指導的立場を維持できるか、否かの試金石になると思います。

円安は大歓迎という声が強い中、
国内の圧力に負けてしまうのでしょうかね。

万が一、日本以外の国が、ユーロ高、ドル高阻止で、
協調行動をとった場合には、円高のスピードは
「想定外」になるかも知れません。

考え方としては、12月半ばまでに85円を
超える円安はスピード違反と見ています。

予想レンジは、
ドル円が77.80〜83.80円、
ユーロ円が101.80〜108.80円、
英ポンド円が125.80〜132.80円、
ドル円が78.80〜87.80円。