安倍氏の要請踏まえ「物価安定のめど」見直し=日銀総裁

日銀の白川方明総裁は20日金融政策決定会合後に
記者会見し、日銀が採用している「物価安定の目途」を
新政権と協議の上で見直し、来年1月の次回会合で
結論を出すと明言した。

自民党安倍晋三総裁が、デフレ脱却に向け2%の
物価目標を設定するよう要請していることを踏まえという。

白川総裁は日銀が今年2月に導入した物「めど」は
そもそも年一度点検することが決まっているとしつつ、
安倍氏の要請が点検を前倒しで実施する理由であること
を認めた。

今は当面1%としている物価目標を2%に引き上げる
可能性について、「結論が決まっているわけでない」と述べた。

安倍氏が日銀に求めている政府との政策協定(アコード)
についても「政策委員会で十分議論したい」との姿勢を示した。

一方、物価目標について「柔軟な政策運営が先進国の
中央銀行の共通理解」と述べ、物価上昇率が目標に
達するまで機械的に金融緩和を進めるような政策運営は
望ましくないとの考え方を改めて示した。

白川総裁は会合終了後「野田首相と安倍自民総裁に
電話で内容を連絡した」と明らかにした。

従来から「重要な決定後には首相や関係閣僚に
連絡している」とし、異例な対応ではない
との姿勢を強調した。

買い入れ基金を10兆円増額した今回の追加緩和と、
新たに詳細を公表した新型貸出制度により「今後1年
あまりで50兆円強の大規模な資金供給を行う」と強調。

これにより日銀が民間金融機関に供給する貨幣量
(マネタリーベース)の名目GDP国内総生産)比率は、
「現在27%と先進国で最大だが、1年後は40%に近づく」
と説明した。

白川総裁は説明に際し、総裁就任後
初めてフリップボードを利用。

「日銀が非常に大規模な資金供給を行っている点について
国民に誤解がある。日銀が地味なせいで十分浸透していない」
と述べ、強力な金融緩和に対する理解を求めた格好だ。

また「日銀の緩和的な金融政策は為替に相応の
影響与えている」と明言し、表面的には円高是正が
目的でないとしてきた従来の姿勢からやや変化を見せた。

新型貸出制度についても、「企業による外貨への
転換を通じ円高是正に寄与する」と説明した。

基金とは別に「年間21.6兆円の長期国債を期限定めず
買い入れている」とも述べ、中央銀行のバランスシート
拡大による事実上の通貨安競争に後手を踏んでいない点を
暗に示唆したようにもみられた。

一方で、「財政ファイナンス中央銀行による財政支援)
目的の国債買入は決して行わない」とも強調。

金融緩和などを通じ「極めて低い長期金利に慣れると、
財政規律緩む可能性がある」と警鐘をならした。

日本経済の先行きについては「企業の設備投資計画が
下方修正されないか注意していく」、「12月短観
企業短期経済観測調査)で企業の業況感が製造業を
中心に慎重化した」との懸念を示した。

米国で大型減税の期限切れと歳出の強制削減が
年明けから重なる「財政の崖」が現実となる場合は、
「米景気の回復を損ない、日本を含め世界経済に
相応の影響を与える」との見方を示した。

石田浩二審議委員がきょうの会合で提案し、反対多数で
否決された日銀当座預金の超過準備に対する付利撤廃については、
さらなる金利低下を促して為替に働きかけるのが狙いと説明した。