円、「発言」で荒い動きに

今週の為替相場は、日本の政府高官による
円安誘導「発言」で、円が売られやすい展開と
なることが予想されます。

安部政権が発足してから、政権の中から、
為替相場に対する言及が止まりません。

日銀との政策協定が決まったものの、
その後、材料出尽くしから、円が買い戻される
動きが強まるなかで、「1ドル=100円でも構わない」
とする発言が飛び出しました。

それまでは、超円高の修正局面にあるとの発言が
出るなかで、円安にも限界があるとの指摘もされていました。

この発言が円下押しの圧力を減じていたわけでした。

円高も、円安も行き過ぎれば、経済に悪影響を
与えることは間違いないのです。

恐らく、今回の「1ドル=100円でも構わない」とする発言は、
政府と日銀がインフレ目標で協定を結んだのに、
円が上昇したことに苛立った発言なのだと思います。

しかし、為替相場に対する発言があまりにも多過ぎると考えます。

米国では、為替相場に対して
言及出来るのは、大統領と財務長官だけです。

FRB議長でさえ、為替相場に対して
公式には言及する資格がないのです。

それに比べて、安部政権は、みんなで
円安誘導を行っている状態です。

民主党政権は、駄目だったけど、
為替相場に対する言及は節度のあるものでした。

円高が続く中で、直接的な
円安誘導を行うことはありませんでした。

政権が苦境にある中で、どれだけ円高から
円安に舵をとる、分かりやすい政策を
打ち出したかったか。

「円安誘導」は禁じ手とした
気概だけは、買いたいと思います。

安部首相が為替相場に言及するのは理解できますが、
それ以外の人がどうして水準まであげて発言するのか、
理解出来ません。

日本の「円安誘導策」については、ロシアから批判され、
欧州からも、米国からも批判され始めました。

新興国からも、先進国の自国通貨安政策が批判されています。

さらに、欧州からは、日銀の独立性が毀損したとの批判が出ています。

戦後の新たな金融制度を確立する中で、
中央銀行の独立性がコンセンサスになりましたが、
日本はあっさりとそれを手放してしまいました。

戦前の軍部が戦争を遂行するために、何もかも
統制したのと同じ手法を採り始めています。

国際金融の世界では、日本は優等生でしたが、
政治の介入が今後さらに強まると想定されることで、
日本の役割が減って行く予想がします。

日本自身が、国際金融市場から退場する姿が浮かんできます。

日本は、60有余年前の敗戦で、孤立化は
危険であることを学んだはずです。

しかし、安部政権が行っている「円安誘導策」や
「日銀の独立性を奪う」ことは、戦前に
回帰しようとしているか見えません。

そういう国を、国際社会はどう考えるのでしょうか。

まだ、為替市場は、経済的、政治的要因を材料に
動いていますが、日本が今の動きを強めていくと、
「日本異質論」が強まり、日本の主張が
通り難くなると思います。

国際金融市場できちんと足元を固めて、
日本の存在感を高める必要があると思います。

足元でどたばたしている「円安誘導発言」を
整理する必要がありそうです。

国際金融市場にきちんとしたメッセージを伝えることが
出来ないと、為替相場の乱高下に見舞われる可能性があります。

日本の「円安誘導策」については、国際的な批判が
高まるのではないかと思います。

この中、米国も欧州も、経済指標は
まだら模様ながらも好調な指標が増えています。

経済面での優位性がドルやユーロの上昇に
繋がる可能性があると考えています。

日銀は追加緩和を行いましたが、FRBもECBも、
追加緩和の可能性は乏しいと思います。

金利面でも、ドルやユーロの優位は動きません。

ただ、通貨安戦争に繋がりかねない過度の円安は
容認されない、それをきちんと把握したいと思います。

予想レンジは、
ドル円が86.80〜94.80円、
ユーロ円が116.80〜124.80円、
英ポンド円が137.80〜145.80円、
ドル円が88.80〜96.80円。