G7声明「金融政策は国内目的」を明確化、新興国との衝突回避

日米欧7カ国(G7)の財務相中央銀行総裁らが、
20カ国・地域(G20財務相中央銀行総裁会議を前に
声明を急きょ取りまとめたのは、G20会合で主要国の
金融緩和策に批判を噴出させかねなかった新興国との
「正面衝突」を回避する狙いが背景にあったとみられる。

今回の声明は「為替レートは市場で決定される」
との基本認識や、為替介入などを示唆するとされる
「市場での行動に関して緊密に協議すべきことを
再確認する」ことなど従来のG7見解を踏襲。

その上で、各国の財政・金融政策が「それぞれの
国内目的を達成することに向けられている」こと、
「為替レートを目標にしない」ことなどを
明言したことがポイントだ。

こうした主張を声明の形で取りまとめる
きっかけになったのは、安倍政権の発足。

金融危機の傷跡が深く残る欧州を中心に、主要国が
揃い踏みで導入した緩和的な金融政策が、新興国から
通貨高や急激な資本流入を生み出していると批判を
受ける中、大胆な金融緩和を旗印とする安倍政権が発足し、
金融市場では株高や円安が大きく進行した。

これまで欧米などの金融政策運営を「近隣窮乏化策」と
批判し続けてきた新興国側の不満は、日本もその列に
加わりかねなくなったことで、頂点に達しつつあったようだ。

15〜16日にロシアで行われる今回のG20は、事前から
関係者の間で「久しぶりに日本が主役になりそうだ」
(国際金融筋)との声が多く上がっていた。

アベノミクス」で日本が長期化するデフレから脱却し
成長軌道に乗れば、世界経済にも好影響をもたらすが、
円安誘導で自国へさらに悪影響があっては困る。

G20で「麻生財務相の説明を是非聞きたい」
(通貨当局関係者)として身構える新興国の姿が、
かねてから金融緩和による景気下支え策へ軸足を
移していたG7の思惑を一致させたといえる。

G20を前に結束したかに見えるG7内でも、
急速な円安進行をおう歌する日本と、ユーロや
ドルの上昇が回復軌道に乗りつつある経済の
冷や水となりかねない欧米各国との間に、
温度差が生じているのは確かだ。

各国が声明を発表したわずか4時間後、
あるG7関係の高官は早くも、声明は
円の過度な変動への懸念を示唆したものだと明言し、
外国為替市場では円が急速に上昇した。

だが日本政府内には、ひと足先に大規模な金融緩和策に
踏み切った欧州や米国のあおりを受け、資本の逃避先となった
円が歴史的水準で高止まり続けたことで、震災後の
経済回復途上で苦戦を強いられたとの思いがある。

ある日本政府の高官は、安倍政権の金融緩和策や
円の下落に苦言を呈した一部の欧米当局者に対して
「彼らには言われたくない」と不満を隠さない。

G7が声明で示した大同団結は、
薄氷の上に成り立っている。