キプロスの銀行は営業再開初日大きな混乱なく、資本規制1カ月継続

キプロスの銀行が28日、約2週間ぶりに営業を再開した。

小切手の換金禁止や1日の預金引き出し限度額を
300ユーロに制限するなど厳しい資本規制が敷かれる中、
銀行の前に列を成す市民の姿は冷静で、懸念されたような
預金取り付け騒ぎは起こっていない。

キプロス政府は当初、資本規制の実施期間について
1週間程度と説明していたが、カスリーディス外相は同日、
「中銀の見通しによると、多くの規制は1カ月の期間を
かけて徐々に解除される」と述べ、想定よりも解除時期が
後ずれすることを認めた。

ただエコノミストは、経済が危機を脱却できない限り、
資本規制の解除は困難との見方を示している。

資本規制では、5000ユーロ以上の商取引をすべて
中銀が精査するほか、国外への現金持ち出しも
1000ユーロに制限されている。

資本規制の実施を受け、
キプロス証券取引所は、
この日も取引を停止した。

預金課税観測の高まりを背景に、キプロスの銀行預金の
多くが電子取引を通じてすでに流出していることも分かった。

キプロス中銀のデータによると、他のユーロ圏諸国が
キプロスの銀行に預けている預金は、2月に18%減少。

欧州中央銀行(ECB)のデータからは、キプロス民間部門による
2月の国内預金残高が2.2%減の464億ユーロとなったことが判明した。

こうした中、ドイツの経済紙ハンデルスブラットは、
キプロス銀の営業再開に備え、ECBが50億ユーロ
(63億9000万ドル)を空輸していたと伝えた。

キプロス政府は銀行セクター危機の原因を追究するため、
委員会を設置したことを明らかにし、刑事、民事の
双方から調査する意向を示した。

金融市場では、キプロス危機が他の重債務国にも
波及するとの懸念から、独10年債利回りが
一時1.25%まで低下し、前年8月3日以来の水準を付けた。

一方、スロベニア2年債の利回りは7%近くまで上昇。

市場がデフォルト(債務不履行)リスクの増大を
織り込んでいることを示唆した。

またムーディーズは、キプロス支援が一段の
リスクになるとして、アイルランドポルトガル
格付け見通しを「ネガティブ」で据え置くと発表した。

資本規制の導入を受け、エコノミストの間では
キプロスユーロ」が誕生するとの指摘も出ている。

自由に取引されるユーロに対し、キプロス国内に
滞留するユーロの価値が下がると考えられている。