G20が債務削減の具体的目標設定見送り、金融緩和の副作用に「留意」
米ワシントンで開催されていた20カ国・地域(G20
財務相中央銀行総裁会議は19日、債務削減について
具体的な目標を設定する必要はないという認識で一致した。

世界経済の回復に対する懸念から、
財政健全化を重視する姿勢をやや修正した。

新興国の懸念に配慮し、日本などの大規模金融緩和が
もたらし得る悪影響を注視する方針を示した。

債務削減問題について、議長国ロシアのシルアノフ財務相
閉幕後の記者会見で、特定の数値よりも全般的な債務削減の方が
重要だという考えで一致したことを明らかにし、「ソフトな
パラメーターにして、各国特有の状況に応じて、修正・
調整すべき戦略的な目標とすることで一致した」と述べた。

今年G20の議長国を務めるロシアは、9月にサンクトペテルブルク
開催されるG20首脳会議までに特定の債務削減目標設定について
合意を取りまとめることを目指していた。

だが、国内総生産GDP)に対する債務の
比率を目標とする案に日米が強く反対。

米国はG20が引き続き成長を
重視することを主張した。

カナダのフレアティ財務相は、「正直に言えば、
もっと表現を強めることもできたが、財政戦略を
サンクトペテルブルク首脳会議で話し合うことが
できれば十分だ」と述べた。

声明には、G20が金融緩和が長引くことで生じる副作用に
留意するとの文言が盛り込まれた。

声明は「金融政策は国内の物価安定と
景気回復の支援を目指すべき」と表明。

韓国が新興市場の懸念に
配慮するよう主張したという。

シルアノフ財務相は、日本の緩和策が及ぼす副作用への
監視強化の必要性も合意内容に含まれたとした。

日銀の黒田東彦総裁は、副作用の具体的な
内容は協議されなかったとしている。

閉幕後に米シンクタンク戦略国際問題研究所CSIS)で
講演した麻生太郎財務相は、安倍政権のデフレ脱却・
景気回復に向けた一連の政策「アベノミクス」によって
円が下落したが、それはアベノミクスの副産物に
すぎないと説明。

「円安がわれわれの目標という指摘は的外れ」と述べた。

麻生太郎財務相は「デフレはあまりにも根強く、
それから脱却するのはあまりにも難しい。
(デフレに打ち勝つために)われわれは可能な
あらゆる手段を使わなければならない。結局のところ、
日本が縮むのは世界にとってマイナスでしかない」と述べた。

融資促進や消費拡大を狙って大量の資金を
供給しているのは日銀だけでない。

米連邦準備理事会(FRB)やイングランド銀行(英中銀)、
欧州中央銀行(ECB)も実施している。

インドのチダムバラム財務相はピーターソン国際経済研究所で
「彼らは極めて緩和的な金融政策をとっている。次々に
転げ落ちていくように見える経済を救うために必要なことは
何でもやっている」と指摘する一方で、日本については
「日本の成長はインドにとって良いことだ。日本経済が
スタグネーションなのは、インドにとって良くない。
日本には成長してほしい」と述べた。

ブラジルのマンテガ財務相も、長きにわたるデフレを考えれば、
日本の景気刺激措置は「理解できる」と述べた。

ただ、G20は引き続き為替レートを
注視しなければならない、とクギも刺した。

G20は、ユーロ圏が銀行同盟を
迅速に実現させるよう要請。

銀行同盟は、問題を抱える銀行の支援や規模縮小を行う
清算機関を設立するスキームの導入が柱の1つとなっているが、
ドイツは導入の前に欧州連合EU)の関連法規を改正する
必要があると主張し続け、域内で足並みがそろわない。

G20の討議では、ユーロ圏の
問題にかなりの時間が割かれたという。

ある米財務省高官は、欧州ではキプロス救済で
政府と銀行の「破滅のループ」がまだ断たれていないことが
明らかになったと指摘。

銀行同盟に向けたさらなる措置が
必要だとの認識を示した。

ユーロ圏では、厳しい財政緊縮を実施する
国を中心に景気が冷え込んでいる。

かねてより米国は、欧州に財政健全化努力を
和らげるよう求めている。

ルー米財務長官は、国際通貨基金IMF)会合のために
準備した声明で「欧州の需要拡大は世界の成長に不可欠だ。
欧州では、どうすれば適切なマクロ手段の組み合わせを
通じて需要をよりよく下支えできるか、財政健全化のベースを
調整できるか、金融の分断を解消できるか、リバランスを
実現できるか、といった歓迎すべき議論が行われている」と述べた。

これまでG20は、特に先進国を念頭に
財政健全化を標榜してきた。

しかし、欧州では厳しい財政緊縮で経済が低迷。

英国は過去5年間で3回目の
景気後退局面に陥りそうな情勢だ。

米経済には明るい兆しが見えるが、エコノミスト
強制的歳出削減など、財政問題が今後
もたらす影響を注視している。

国際通貨基金IMF)は16日発表した世界経済見通しで、
世界経済の成長率予想を引き下げたが、一部欧州諸国には
財政緊縮ペース落とすよう、改めて求めた。

ルー米財務長官は「慢心しているときではない。
テールリスクはこのところ後退しているが、
世界経済の成長は低迷が続いており、失業率も
依然として高過ぎる」とし、世界の需要拡大が
不可欠であり、「われわれの最優先課題」と指摘した。