ECB10カ月ぶり利下げ、中小企業支援検討も表明

欧州中央銀行(ECB)は2日、主要政策金利である
ファイナンス金利を0.25%ポイント引き下げ0.5%とした。

ユーロ圏のインフレ率が目標を大きく下回るとともに
失業率が過去最悪の水準に悪化する中、10カ月ぶりの
利下げに踏み切った。

上限金利の限界貸出金利は1.50%から1%に引き下げる一方、
下限金利の中銀預金金利は0.0%に据え置いた。

ただ利下げによる景気支援効果が限定的なことも認識しており、
ECBは利下げとともに少なくとも来年7月まで必要な限り
流動性を供給する意向を表明。

中小企業向けの融資促進策を検討する考えも示した。

ドラギ総裁は理事会後の記者会見で「経済のぜい弱な
センチメントが春にかけても続いた」とし、「ECBの
金融政策は、必要な限り緩和的であり続ける」と言明した。

ドラギ総裁は前回の理事会で「行動する用意がある」と
表明しており、利下げは広く見込まれていた。

総裁は利下げについて「強力なコンセンサスがあった。
中でも利下げ幅を25ベーシスポイント(bp)にとどめることに
圧倒的なコンセンサスがあった」と指摘。

25bp以上の利下げを求める意見が出たことを示唆した。

さらに下限金利である中銀預金金利を現在のゼロ%から
マイナスに引き下げる可能性についても「技術的には
用意が整っている」と指摘。

マイナス金利により「意図せぬ事態が複数起こる可能性があるが、
引き下げを決定した場合には問題に対処し解決する。その上で
予断を持たずに再検討し、必要なら行動する用意がある」と言明し、
これまでより踏み込んだ発言を行った。

ドラギ総裁は、ユーロ圏経済が下期に回復するとの見方は
据え置いたものの、見通しには「下振れリスク」あるとも強調した。

これまでECBは一段の措置を講じる可能性を示唆する場合に
すべての情報を「非常に注意深く見守る」としており、
ドラギ総裁はこの日、同じ発言を行った。

ECB総裁の会見を受け、独連邦債先物
146.99に上昇し、最高値を更新した。

ユーロ圏の失業率は3月に過去最悪の12.1%に上昇する一方、
4月の域内インフレ率はECBの目標である2%弱の水準を
大きく下回る前年比1.2%に低下。

物価安定の責務達成に向けた圧力が
利下げへとECBの背中を押した。

インフレ圧力がここにきて急低下していることを受け、
ECBがインフレの一段の鈍化を回避するため、
政策金利以外の金融政策手段を模索する可能性も
高まっている。

ECBは金融政策の伝達メカニズムの改善を図り、
超低金利の恩恵が南欧諸国にも波及することを目指している。

とりわけECBは、銀行以外に資金調達の代替策がない
中小企業向けの与信低迷を懸念しており、ドラギECB総裁は
貸し渋りの言い訳として資金不足への懸念が
存在してはならない」と述べた。

その上で「理事会は資産担保証券(ABS)市場の
機能促進について他の欧州機関と検討することを
決定した」とし、ABS市場の活性化を通じて
中小企業向けの支援策を模索する考えを示した。

ただ、まだ何も決定されていないとしている。

一方で、ECBはユーロ圏経済を回復軌道に乗せるために
こうした措置を行うのであり、政府は構造改革や統合深化に
向けた取り組みを加速しなければならないと強調。

とりわけ銀行同盟の「迅速な実施」を求めた。