黒田緩和の矛盾で債券市場動揺、複数の委員が指摘=日銀議事要旨

日銀が27日公表した議事要旨によると、4月26日開催した
金融政策決定会合では、同月4日に導入したばかりの
「黒田緩和」について早くも激論が交わされていたことが
明らかになった。

複数の審議委員が黒田緩和導入直後の長期金利乱高下について、
大規模な国債買い入れと2%物価目標の早期実現が「相反するとみられ、
債券市場が動揺した可能性がある」と懸念を示していた。

白井さゆり、木内登英佐藤健裕の3人の審議委員が
それぞれ独自提案を行い、反対多数で否決されたこともわかった。

4月4日の黒田緩和導入後の長期金利上昇について、
複数の委員は「金利の押し下げにつながる大規模な
国債の買い入れと、金利の押し上げにつながる(2%)
物価目標の早期実現への強い姿勢」の矛盾を理由として指摘。

このうちの1人は「債券市場の不安定さは
なお続いている」との懸念を示した。

ある委員は金融機関の行動は名目金利の動きに左右されるため、
日銀が意図しているような金融機関の国債売却などの
「資産入れ替え(ポートフォリオ・リバランス)が
遅れることが懸念される」と指摘した。

一方、別の1人の委員は金利上昇は「予想物価上昇率
高まりと実体経済の好転を示唆している可能性がある」
と指摘した。

足元の株価など資産価格の上昇について、1人の委員は
「バブルを懸念する声も聞かれるが、企業収益等の
ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を
反映したものであり、過大評価とはいえない」
との見方を示した。

物価連動債から算出される予想インフレ率(BEI)などが
上昇している点について、ある委員が「こうした指標は
消費税引き上げのがい然性を織り込んでいる可能性もある」
ため直ちに予想インフレ率が高まっているとは言えない
との見方を示した。

一方、1人の委員は「金融政策のレジーム・チェンジ(体制転換)に
関する市場の見方を反映している」と反論している。

1人の委員は、各種市場で海外投資家を中心に(日銀の)
政策効果を織り込んだ動きとなっているのを踏まえ、
実体経済が改善するにつれ、国内の経済主体も
予想インフレ率を高めていく可能性が高い」との見方を示した。

一方、複数の委員は「予想インフレ率が現実の物価上昇率
高まりにつながるかは、そのメカニズムも含めて不確実性が
高い」と指摘。

2015年度にかけて物価上昇率が目標の
2%程度に達するのは難しいとの見方を示した。

これに対して「目標として掲げた以上、2%の物価上昇率
いえる状況を2年程度で実現できるよう、政策運営していく
必要がある」と1人の委員が述べている。

4月26日の決定会合では9人の審議委員が先行きの
経済見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」
をまとめ、今回から予測を出す期間を1年延ばして3年分とし、
2015年度は物価上昇率見通しが1.9%と物価目標の2%近くに
達するとの見通しを打ち出した。

これに対して佐藤委員は2015年度にかけての
物価見通しについて「2%を見通せるようになる」と
文言を変更するなどと提案したことが明らかになった。

木内委員は2015年度にかけての物価見通しを
「上昇幅を緩やかに拡大させていくことが見込まれる」
とし、2%目標の達成時期についても「中長期的に目指す」
と変更、黒田緩和は2年程度の集中措置とし、
その後は柔軟に見直すと提案した。

木内氏とみられるある委員は、2%の物価目標を2年程度で
達成するのが難しいなか、黒田緩和が長期間継続され、
あるいは極端な追加措置が実施されるとの観測が
市場で高まれば、金融面での不均衡累積など
中長期的な経済の不安定化につながる懸念があるため、
継続期間を2年程度にし、その時点で柔軟に見直す
との表現に変更すべきと述べている。

白井委員は、リスク要因の記述の
明確化などについての独自提案を行った。

消費税引き上げによる家計の実質所得の減少リスクを
明確に記述するよう提案している。