国債残存期間の一時的短縮、佐藤日銀審議委員が前向き

日銀の佐藤健裕審議委員は、日銀が買い入れている
国債の平均残存期間が、政策で定められた6年を
一時的に割り込んでも構わないとの見解を述べた。

30年債などの超長期債を生保などから買い入れるのは
難しい上、国債市場の安定には中短期債の金利安定が
重要なためだ。

残存期間の長期化は4月の導入直後は金利不安定化の
要因ともみなされただけに、日銀の金利安定化に向けた
メッセージと受け止められそうだ。

佐藤委員は22日午前中の講演で、日銀の国債買入について
「1〜5年の中短期ゾーンを厚めに買い入れることで、
利回り曲線全体の安定化を図ることが期待できる」とし、
買い入れ平均残存期間が「結果として一時的に6年を
多少割り込むことがあっても、私個人の見解としては
問題ない」との認識を示した。

午後の記者会見では、この点に関連し「期間3〜5年の
短期金利が安定すれば、利回り曲線全体が安定化
するため」と説明。

政策で目標とする残存期間に6〜8年と幅があるのは
「生命保険や年金基金など機関投資家保有する
超長期債を日銀が買い入れるのは実際上難しい面も
あるため」との見方を示した。

日銀は4月4日に資金供給量(マネタリーベース)を
2倍に引き上げる異次元緩和を導入した際に、
買い入れる国債の残存期間の長期化(3年弱から
7年程度)も打ち出した。

「2年」で物価「2%」を達成するため資金供給量を
「2倍」にする、とのキャッチコピーに結果的に
平仄を合わせたように、残存期間も2倍に伸ばした。

国債発行残高の平均残存期間が
7年だから」と日銀は説明している。

ただ、円債市場では、日銀が期間の短い国債の買入れを
減らすとの思惑などから長期金利上昇の一因となった
とみられている。

日銀内でも、残存期間の2倍延長は理論的根拠が
やや弱いとして、必ずしも重視しない幹部もいる。

実際、安倍晋三政権の経済政策を支えるリフレ派は、
マネタリーベース拡大で人々の期待を通じて物価を
引き上げるとのロジックを中核に据えるが、日銀が
買い入れる国債の残存期間については細かく主張していない。

リフレ派の代表的な論客である岩田規久男副総裁の
著書にも、中央銀行保有国債の年限と期待インフレ率に
ついては細かい論考は示されていない。

6月以降、円債市場はなぎのように安定しており
「もう少し変動率が欲しい」(金融機関)との声まで
聞かれ始めたが、「市場が縮小しただけで、何らかの
ショックで金利が急上昇するリスクはある」(銀行)
との見方が多い。

佐藤委員は金利上昇局面で日銀が機動的に動く姿勢を
強調することで、市場の安心感醸成を狙ったとみられる。