金利安定確保に財政への信認重要=8月日銀会合要旨

日銀が10日公表した議事要旨によると、
8月7〜8日に開催した金融政策決定会合では、
多くの委員が、金利安定には財政への信認維持が
重要とし、政府の財政健全化に向けた取り組みに
期待感を表明していたことが明らかになった。

ある委員は、財政健全化への政府の取り組み姿勢が
後退すれば、国債の信認低下で長期金利が上昇し、
異次元緩和の効果を減殺する可能性があることに
懸念を示した。

8月会合では、4月の異次元緩和導入直後に乱高下した
長期金利の動向について議論が交わされている。

連関性の高い米国など海外の長期金利が上昇し、
日本の景況感が改善しているにもかかわらず、
足元で長期金利が安定している背景として
「日銀による巨額の国債買い入れが、(長期金利上昇を)
強力に抑制している」と多くの委員が指摘。

一方、ある委員は「債券市場の不安定さは潜在的には
引き続き残されている」とし、「今後の国内物価や
米国金利の動向が及ぼす影響に注意が必要」と語っている。

その上で、多くの委員が金利の安定確保には
「財政運営に対する信認が維持されることも重要であり、
政府が財政健全化に向けた取り組みを着実に進めていくことを
期待している」と表明。

ある委員は、財政健全化に対する政府の取り組みが
後退する場合は「国債の信認低下から長期金利が上昇し、
結果的に日銀の政策効果を減殺する可能性がある」
と警鐘を鳴らした。

今年4月に導入した異次元緩和の効果について
「しっかりと働いており、金融環境の緩和度合いは
着実に強まっている」との認識を政策委員が共有。

効果波及の要素である実質金利について多くの委員が
「予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利
低下している」との認識を示し、このうち1人の委員は
実質金利低下は「今後もさらに進む」との見方を示した。

8月会合では、景気の認識を「緩やかに回復しつつある」とし、
7月会合まで7カ月連続で上方修正していた判断を据え置いた。

所得から支出へという景気の前向きな循環メカニズムは
「次第に働き始めている」との見解を共有したものの、
「設備投資や雇用者所得などの実績を確認したい」
との声が多かったため。

個人消費について複数の委員は「底堅さを増している」
との認識を示したが、ある委員は「株高による資産効果
減衰している可能性があり、今後の個人消費の持続性には
注意が必要」と語っている。

6月に前年比でプラス転換した消費者物価(除く生鮮食品、
コアCPI)については、多くの委員が「エネルギー関連の
押し上げだけでなく、幅広い品目に改善の動きがみられる」
としたが、複数の委員が前年のエネルギー価格下落の影響が
はく落する夏以降に「(プラス幅)拡大が一服する可能性が
ある」との認識を示した。

また、世界経済では、米金融緩和政策の縮小観測に関し、
何人かの委員が「新興国における資金流出が経済に
及ぼす影響について、引き続き注意が必要」と指摘。

ある委員は、緩和縮小観測の背景には「リスクの
高い金融商品への資金流入にみられるような、
金融市場の一部の過熱をFRBが意識している
との見方がある」ことを紹介した。