イエレン米FRB議長が緩和縮小継続表明、労働市場は「完全な回復に遠い」

米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は11日、
下院金融委員会で証言した。

労働市場の回復は「完全と呼べる状況から程遠い」
との見解を示す一方で、緩和縮小を継続していくと述べ、
政策の大幅な変更は視野に入れていないことを明らかにした。

今回の議会証言は、FRB議長として金融政策や
経済情勢に関し公に発言する初めての場となった。

イエレン議長は、長期失業が「異例の高水準」
となっていることや、パートタイム職にしか
就けない労働者の割合が「極めて大きい」
状態とし、FRBが注視していく必要がある
との考えを示した。

その上で「いくつかの指標で見れば、われわれの
経済や労働市場は正常な状態に戻っていない」と指摘。

労働市場には依然かなりの緩みが存在する」と述べた。

イエレン議長は一部の共和党議員から厳しい質問を
浴びつつ、バーナンキ前議長のとった政策アプローチを
踏襲していくと強調した。

米失業率は6.6%と、FRB量的緩和第3弾
(QE3)を導入した2012年9月から
1.5%ポイント低下している。

ただイエレン議長は、FRBが持続可能な
最大雇用と整合するとみなす水準は依然として
「大幅に上回っている」との認識を示し、
労働市場の回復は完全と呼べる状況から
程遠い」と述べた。

4時間以上という異例の長丁場となった
質疑応答では、議長が規制問題に関する
厳しい質問に時折、戸惑う様子もうかがえた。

銀行の自己勘定取引を制限する「ボルカー・
ルール」の詳細については、説明する前に
検討が必要と答える場面もあった。

FRBが昨年12月に緩和縮小に着手して以降、
雇用の伸びが急激に鈍っている兆しが出ており、
一部ではFRBが緩和縮小を停止するのでは
との見方も出ていた。

だが議長は、労働市場の改善やインフレ率の
上昇に関する当局者の予想が経済指標によって
裏付けられれば、「今後の会合で慎重に一段と
減速させる公算が大きい」とし、緩和縮小路線を
変更しない考えを示した。

その上で、資産買い入れはあらかじめ
決まった道筋にはないとのFRBの立場を
あらためて表明した。

インフレ率は現時点で1.1%にとどまっているが、
「最近の弱さは原油価格や非原油輸入物価の下落など、
一時的となる公算の大きい要因を反映している」と分析。

今後は上昇して、FRBが目標とする2%に
再び近づいていくとの見方を強調した。

次回3月18〜19日のFOMCで、経済見通しに
著しい変化があれば、緩和縮小の停止を検討する
考えを示した。

労働市場の見通しが「著しく悪化」したり、
インフレ率が時間の経過とともに上昇して
いかなかないといった非常に深刻な懸念が
生じた場合にのみ、資産買い入れ拡大の検討を
促す条件となるとした。

イエレン議長は、国際金融市場で最近、
大きな変動が見られるとしつつ、現時点で
「米経済見通しに著しいリスクを及ぼして
いない」と述べた。

議会証言を受けて、米長期債利回りは
2週間ぶりの水準に上昇する一方、
主要株価指数はそろって1%超上昇した。

市場を動揺させるような発言を
イエレン議長が行わなかった点が好感された。

イエレン議長は、6カ月以上職に就けない
失業者の割合が「異例に高い」ほか、
フルタイム雇用を望みながらパートタイムで
働いている人の数も「非常に多い」と指摘。

こうした状況は「労働市場の状況を評価する際に
失業率以外の要因も考慮することの重要性を
浮き彫りにしている」と述べた。

昨年12月と1月の雇用統計が軟調だった
ことについては「これらの統計の意味する
ところを解釈するにあたり、結論を急ぐような
ことがあってはならない」と述べ、例年にない
寒波の影響が出た可能性もあるとした。

失業率はFRBの目標水準を「大きく上回っている」
とする一方、労働参加率低下の大部分は構造要因で、
そのため恒久的とも指摘した。