デフレの文言削除、物価の順調な上昇が念頭=黒田日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は21日の金融政策決定会合後の
記者会見で、同日の声明文から「デフレ」の文言が
消えた理由を尋ねられ、「異次元緩和が効果を
発揮しているとの認識を踏まえたもので、特別な
意味はない」としつつ、物価が順調に上昇しつつある
事態が「頭にあったのは事実」とも回答した。

市場には追加緩和期待がくすぶるが、日銀としては
デフレ脱却が順調に進みつつあり、当面は現行の
政策を継続する意向をにじませた。

同時に景気・物価の回復に伴い露呈した
成長力不足に対して、政府・民間の取り組みを
強く期待した。

日銀は昨年4月以来、会合後に公表される声明文に、
異次元緩和が「15年近く続いたデフレからの脱却に
導く」と記していたが、今回初めてこれが削除された。

代わりに、異次元緩和は「所期の効果を
発揮している」との文言が追加された。

これについて黒田総裁は「実質的な意味を
変えたわけでない」とし、「あくまで政策開始後
1年数カ月の状況をみて、2%の物価目標達成に
向けての道筋を順調にたどっており、物価目標を
安定的に達成するまで異次元緩和を継続する
というのも従来通り」と答えた。

経済物価情勢について「上下双方向のリスクを点検し、
必要な調整を行う」との姿勢も改めて繰り返した。

デフレについては「一般的に物価が持続的に
下落する状態を示す」としつつ、デフレ脱却の
是非など「判断には背後の経済の動きや、
色々な指標を総合的に点検する必要がある」とした。

その上で日銀は2%の物価目標実現のため
「強い決意をもって今後とも異次元緩和を
推進する」と強調した。

一方、会見で総裁が強調したのが成長力の強化。

「この1年間の金融緩和や財政出動で需要が
高まってきた結果、水面下の供給力不足が
顕在化してきた」と表現。

建設など「一部の業種で人手不足により作業が
遅れる状況も聞いており、非常に重要な課題」とした。

そして「様々な努力により供給制約を打破する
好ましい経済成長を遂げる必要がある」とし、
「政府が成長戦略を加速化あるいは深化させることは
大変好ましく、期待したい」と強調した。

生産と所得、支出がバランスよく成長するには、
中長期的な成長力を高める必要があるとし、
具体例として「1)企業の前向きな投資を促し、
2)女性や高齢者の高度な外国人の活用で
労働供給力を高め、3)規制・制度改革で
生産性を向上することが重要」と列挙した。

異次元緩和のスタートから1年が経過し、
日経平均株価が前年比で大きく上昇しなくなっているが、
黒田総裁は「金融政策と株価や為替が連動することはない」
と指摘。

株価など各種の経済指標をみるが、「基本的に
物価安定を目標として政策運営していく」と強調した。

もっとも、株価は「基本的に企業収益の先行きで
決まる」とした上で、「日本企業は2014年度も
そこそこの増収になるためトレンドとして株高に
変化はない」と述べた。

為替も対ドルでこう着相場が続くが、米国の
緩和縮小などを理由に挙げて「特に円高になる
理由はない」と述べた。

4月1日の消費増税の影響については「駆け込みの
大きかった自動車など耐久財は反動減がはっきり
現れている」としつつ、「企業からは反動減は概ね
想定の範囲内で、基調的な底堅さは維持されている
という声が多い」、「百貨店やスーパーからは、
反動減の程度は徐々に縮小してきているとの声が
聞かれる」などと指摘。

「反動の影響は夏場以降は減衰していく」
との従来見解を繰り返した。

消費者物価指数の先行きについては「しばらく
1%台前半で推移した後、2014年度後半から
上昇する」との公式見解を繰り返した。