著名エコノミスト、米労働市場の流動性低下に警鐘

22日開催のジャクソンホール会議で発表予定の論文で
米国の著名エコノミスト2人は、同国の労働市場
1990年以降、一貫して流動性が低下しており、
労働者は民間セクターの雇用創出が停滞の過程を
たどる中、特定の仕事に縛られているようだ
と指摘している。

論文を発表するのはシカゴ大学
ティーブン・デービス氏とメリーランド大学
ジョン・ハルティワンガー氏で、両氏ともに
労働市場を専門としている。

カンザスシティー連銀が主催し、世界の中銀関係者が
集う同会議は今年、労働市場の問題に焦点を当てており、
米連邦準備理事会(FRB)が米景気回復の強さや
利上げのタイミングについて議論するなかで
いかに雇用や賃金が中心的な問題となっているかを
浮き彫りにしている。

論文は、労働市場流動性の高さという米景気の
強みの一つが失われつつある可能性を指摘。

その背景としては、市場を支配している
大規模小売業者が労働生産性で劣る企業を
倒産に追い込んでいる状況や、高齢化する
企業の従業員が転職を避ける傾向となっていることや、
規制の増加や職業訓練の規定の厳格化で一部の職種で
就職や解雇が難しくなっている現状を挙げている。

これらの問題を受けて、労働市場の「流動性」の
指標は1990年以降25%低下しており、この結果、
雇用水準や生産性、賃金の低下をもたらす可能性が
あると論文は指摘している。

このような変化は、求人の機会が減ることなどから、
熟練度の低い労働者に特に深刻な影響をもたらすとみられる。

イエレンFRB議長はこれまで、失業率といった
主要経済指標は、景気の全容を捉えていないと
指摘しており、賃金の停滞や賃金水準が低い部門への
新規雇用の集中は、中間所得層の先行きを圧迫している
としている。