東大物価指数は下落傾向、1997年増税後と大差なく=渡辺教授

東大の渡辺努教授は30日に都内で講演し、
販売時点情報管理(POS)データを利用した
東大日次物価指数の動きが、4月の消費増税後、
1997年の消費増税後と同様の下落傾向にある
と指摘した。

渡辺教授は、1997年と今年4月の消費増税後の
指数の動きを比較し、増税直後は今年の方が
価格転嫁で大きく上昇したが、その後は
下落基調にあり「残念ながら1997年と
大差ない状況」と指摘した。

東日本大震災直後の小売店での買い占めによる
販売急増や、日銀の量的・質的金融緩和(QQE)
導入直後の為替市場の動きと比較して、指数の
物価上昇は緩やかになっているとし「日銀の
目標とする2%の物価上昇がいかに難しいか
わかる」と述べた。

東大指数の今後の課題として、経済への影響の
大きい家賃動向を反映させたいと強調した。

バブル期の家賃の急騰とその後の下落について、
リクルートの不動産情報を加工した指数の方が、
総務省消費者物価指数の家賃動向よりも、
現実に起きていた地価の乱高下に近い動きを
反映していると説明した。

総務省消費者物価指数が計測している品目に対して、
東大指数のカバー範囲は17%にとどまっているが
「真正の物価上昇であれば、すべての品目の物価が
上昇するので、カバー率の低いことは大きな問題でない」
とし、電気料金など現在は東大指数に含まれていない
品目のみが上昇するならば「真正の物価上昇ではない」
と解説した。

オランダやスイス、ドイツ、イスラエルなど
12カ国が政府統計でPOSデータを活用もしくは
活用の検討を進めていると指摘し、足元の物価動向を
把握するのにPOSに代表されるビッグデータ
活用するのが世界の潮流と強調した。