物価安定目標実現へ、これからも「行動」続ける=黒田日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は25日、名古屋市内で講演し、
デフレマインドの転換への歩みを「ここで止めては
ならない」と述べ、日銀は2%の物価安定目標の
実現に向けて「これからも行動を続ける」と語った。

総裁は、昨年4月の量的・質的金融緩和(QQE)を
導入して以降、需給ギャップが「労働面を中心に
着実に改善」し、予想物価上昇率も「やや長い目で
みれば上昇してきた」と述べ、「デフレマインドの
転換は着実に進んでいる」と評価した。

その上で、10月31日に実施した追加金融緩和も
踏まえ、需給ギャップは今後も改善が続くとともに、
中長期的な予想物価上昇率も物価目標である
「2%程度に向けて次第に収れんしていく」と指摘。

2015年度を中心とする期間に「物価安定の
目標である2%程度に達する可能性が高い」と語った。

総裁は追加緩和の意図について、足元の物価上昇率
鈍化などで2%達成が難しいとの見方が広がっていた中で、
「2%の早期実現の決意にいささかの揺るぎもないことを
改めて行動の形で示す必要があると考えた」と説明。

企業経営者に対して、日銀が物価安定目標を「できるだけ
早期に、そして安定的に実現すると強く約束している」ことを
「最もわかっていただきたい」と強調し、2%の物価上昇を
前提とした意思決定や経済活動に期待を表明した。

デフレマインドが転換する過程では「現預金を持って
何もしない、ことのコストが高くなる」とし、設備投資や
人材投資などに「積極的に収益を使っていくことが求められる」
と指摘。

こうした取り組みは、「円高の修正やデフレ脱却の果実を
広く経済全体に均てんするプロセスになる」と述べ、
「歩みをここで止めてはならない」と主張。

日銀は物価安定目標の実現へ「これまでも行動してきたし、
これからも行動を続ける」と強調した。

その後の質疑応答で総裁は、為替相場について
「企業経営に大きな影響を与えると思っている」
と指摘。

過去の「過度な円高」のもとで企業は海外生産の
移管を加速させたが、これまで円高修正の動きが
続く中、「ようやく今年度には国内投資のウェートを
上げる動きがみられるようになっている」との認識を示した。

その上で、足元で進行している円安の影響について、
輸出の増加やグローバルに展開する企業の収益改善、
株価の上昇、訪日外国人観光客の増加などのプラス面を
指摘する一方、「輸入コストの上昇や、その価格転嫁を
通じて中小企業や非製造業の収益、家計の実質所得に
対する押し下げ圧力に作用する面がある」と指摘。

為替相場の動きを含めた金融・資本市場の動向について、
実体経済に及ぼす影響を含めて、引き続き注意深く
みていきたい」と語った。

また、政府の成長戦略の推進に期待感を表明。

「金融政策も成長力の引き上げに一定の役割を
果たせる」とし、人々が2%の物価上昇を前提に
行動する経済・社会をつくることによって
「企業経営者がリスクをとって前向きの行動を
とることを促し、ひいては成長力の強化につながる」
と語った。

財政健全化に向けた取り組みについても、
「持続可能な財政構造を確立する取り組みが
着実に進められていくことは、日本経済が
持続的に成長する上でも非常に重要だ」
と強調した。

中国経済については、短期と
中長期で分けて考える必要があると指摘。

中長期的には労働力人口の減少や、所得上昇など
経済の成熟化とともに成長率が低下していくものの、
「今年、来年については、7%台前半の成長は十分に
達成できるのではないか」と分析した。

中国人民銀行中央銀行)は21日に利下げを
発表したが、総裁は不動産市況の下落や
物価上昇率の鈍化などを踏まえた「経済状況に
合わせた対応」との見方を示し、「特に物価上昇率
ここまで下がっている中で金融緩和することは、
当然だと思う」と語った。