3割円安で交易損失5.8兆円、前回円安時より小幅に=ミニ白書

内閣府は13日、「日本経済2014〜2015の概要」と題する、
いわゆるミニ経済白書を公表し、消費税増税後の駆け込み
需要の規模や、円安による交易損失を分析した。

この2年程度の円安局面は前回2005年からの同局面と
比較して円の減価幅が大きかったものの、交易損失は
5.8兆円にとどまり、相対的に小幅となった。

エネルギー価格などの安定や、企業の
輸出価格維持で稼ぐ傾向が寄与した。

ミニ白書は、「年次経済白書」を補完し、足元の経済を
分析するため毎年12月に公表するが、今年はやや遅れて
1月公表となった。

今回のミニ白書では、まず消費税
引き上げによる影響を分析。

個人消費の駆け込み需要は前回増税時より
大きめとなり、2.5〜3.3兆円程度、国内総生産
GDP)の0.5〜0.6%程度とした。

また住宅市場の縮小もあり、住宅投資の
駆け込み需要は前回より小さめの1.0〜1.6兆円程度、
GDPの0.2〜0.3兆円とした。

消費税率引き上げによる物価上昇は、実質所得の
減少を通じて個人消費を押し下げたと指摘、
4〜6月期から7〜9月期にかけて合計で
1兆円弱程度、GDPの0.2%程度押し下げたとした。

物価上昇に見合うだけの賃金上昇が
実現されていないためだという。

その後、景気は雇用・所得環境の改善に支えられ、
緩やかな回復基調が持続しているものの、経済の
好循環の波及テンポは、企業規模や地域、所得階層で
差が出ていると分析している。

物価に関しては、デフレ状況ではなくなる中で、
デフレ脱却を実現するには設備投資や賃上げなど
前向きな動きを持続することが重要だと指摘した。

次に持続的成長に向けて雇用や賃金面の課題を分析。

人口減少の下で潜在成長率を高めるには労働参加促進や
失業率引き下げで就業者の確保が必要だとした。

実際、2012年末以降、女性や高齢者の労働参加が
進んで就業者は増加しており、最近では非正規雇用
比率の伸びも鈍化、多様性ある雇用形態へと変化する
兆しがあるとした。

賃金との関係の強い短期失業者などの数が低い水準に
あることから、今後も賃金上昇が期待できる環境にあると分析。

今後、実質賃金の上昇に向け、これまで労働生産性
伸びを大きく下回っている実質賃金の改善や、
交易条件の改善などが重要だと指摘した。

最後に対外的な稼ぐ力に言及。

今回の円安局面では、企業が輸出価格を下げずに
付加価値で稼ぐ傾向にあった一方で、エネルギー価格が
比較的安定的に推移する中で、交易損失が小幅なもので
済んだと分析。

前回円安時の2005年1〜3月期から2007年7〜9月期までの
約8.9兆円(GDP比約1.8%)の交易損失に対し、今回2012年
10〜12月期から2014年7〜9月期にかけては約5.8兆円
GDP比約1.1%)にとどまったとした。