物価2%達成時期、不確実性高まっている=白井日銀委員

白井さゆり審議委員は、物価が目標とする2%に
達する時期について「直近の見通しから後ずれ
する可能性含め、不確実性が高まっている」
との認識を示した。

理由として海外発のディスインフレの波及や、
企業が販売価格を引き上げないリスク、家計の
予想インフレ率がガソリン動向などで不安定化する
可能性を指摘した。

今月4日から10日かけての欧州中央銀(ECB)や
英中銀などでの講演内容を日銀がホームページで公表した。

白井委員は、物価見通しのリスクについて、
原油安によるエネルギー価格の低下と世界的な
ディスインフレ傾向、一部企業の販売価格抑制による
シェア拡大志向、インフレ期待上昇が後ずれする
可能性を指摘。

個人的な見解として、物価上昇率の一時的な低下は、
「物価の基調や国内需要の回復ペースが持続している限り、
容認しうる」としながらも、物価が2%に近づく
タイミングは「直近の見通しから後ずれする
可能性を含め、不確実性が高まっている」
との見解を示した。

物価の基調をみる上では、指標としている
生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)に加え
「(極端な物価の動きを示す品目を取り除いた)
10%刈込平均値、ラスパイレス連鎖指数、上昇品目と
下落品目の数の比率なども重視」し、「企業物価指数や
企業向けサービス価格、商品価格も注視している」とした。

デフレが長期に続いた日本では、人々の物価観を示す
期待インフレ率が「そもそもアンカーされておらず、
しかも1%前後で変動してきた」と指摘。

「期待インフレ率を2%程度に高めていくことが
できるかが重視されている」とした。

その上で、日銀短観において調査している企業の
物価見通しをもとに「企業の中長期の予想物価上昇率
まだ安定しておらず、2%程度上昇していくには道半ば」
と分析。

一方、日銀が公表している「生活意識に関する
アンケート調査」から、家計の予想物価上昇率
「1年後も5年後も物価が常に上昇すると
予想している」とする一方、多くの家計が物価上昇を
「好ましくない」と考えおり、家計が物価上昇を
容認するには現在の雇用・所得環境の改善だけではなく、
「将来の収入期待が高まることが不可欠」と強調した。

日銀は目標とする物価2%の到達を「2015年度を
中心とする期間」と見込んでいるが、2015年度の
物価見通しは、1月の「経済・物価情勢の展望」
(展望リポート)の中間評価において、それまでの
1.9%から1.0%に下方修正された。

この点に関して白井委員は「物価の基調的な動きが
概ね不変との見方が維持されている」とし、要因に
原油価格の下落はやや長い目でみて需給ギャップ
改善を通じた物価の押し上げ要因に作用することや、
インフレ期待が総じて横ばいで維持されていること、
賃上げの動きなどを挙げた。

このため、「物価上昇率は当初の想定よりも
力強いペースで上昇して2015年度末にかけて
2%程度に近づけると見込んでいる」と語った。