FOMC声明、「忍耐強く」削除=利上げへ布石も先行きには慎重

米連邦準備理事会(FRB)は18日まで開催の
連邦公開市場委員会FOMC)後に公表した声明で、
金融政策の正常化に関し「忍耐強く」いられるとした
文言を削除し、約10年ぶりとなる利上げに道を開いた。

一方で、成長率やインフレ率、政策金利見通しを
軒並み引き下げるなど、米景気の先行きに関しては
より慎重な姿勢を示唆した。

同時に公表されたFRB当局者の経済見通しでは、
2015年末時点の適正なフェデラルファンド(FF)
金利見通しの中央値が12月時点の1.125%から
0.625%に大幅に引き下げられた。

これに加え、FRBが言及した経済をめぐる懸念も合わせ、
金融市場では予想よりもハト派的との受け止め方が広がり、
利上げ時期予想は年央から秋に後ずれした。

イエレン議長は会見で「忍耐強くの文言を声明から
削除したからといって、われわれが忍耐強く
ならないというわけではない」と述べた。

FOMCを受けた市場の反応は、株が大幅高となる
一方、原油価格は最大で5%上昇。

ドルは主要通貨に対し急落し、米10年債利回りは
3月2日以来初めて2%の節目を割り込んだ。

経済見通しでは、2015年のインフレ率見通しが
引き下げられたほか、成長率予想も下方修正された。

声明は「インフレ率は長期目標を一段と下回った」
と指摘し、エネルギー価格の下落を背景に、
インフレ率が予想を下回って推移している
との懸念を再度表明した。

FRBは、4月利上げの公算は引き続き小さい
との見方を示し、金利の道筋に関するフォワード
ガイダンスの変更は、FRBが利上げ時期を
決定したことを示しているわけではないと説明した。

ただ、イエレン議長は、6月利上げの
可能性も排除できないと述べている。

一方でFOMC声明は、いかなる決定も指標次第と
強調することで、年内より遅い段階での利上げ開始を
可能にする十分な柔軟性を残した。

声明は「労働市場が一段と改善し、インフレ率が
中期的に目標の2%に回帰するとの妥当な自信が
得られた際に、フェデラルファンド(FF)金利
誘導目標を引き上げることが適切と、委員会は
予想している」とした。

利上げへの布石を打った格好だが、FRB
引き続きまちまちの経済指標に頭を悩ませている。

雇用創出は力強く成長は継続し、米国内の消費需要も
健全だが、原油安や急ピッチのドル高は、FRB
2%のインフレ目標からなお程遠いことを示唆している。

声明では、経済成長は「幾分緩やかになった」とし、
「経済活動はしっかりしたペースで拡大している」
としていた12月声明から景気判断を下方修正した。

エコノミストや投資家は、FRB金利に関する
決定を会合ごとに判断する段階へと移行する
兆しとして、「忍耐強く」を削除するかどうかに
注目していた。

イエレン議長は会見で「本日のフォワード
ガイダンス変更は、FOMCが利上げ開始時期を
決定したことを示していると解釈されるべきではない
と改めて強調したい」とし、「文言変更はとりわけ
6月に必ずしも利上げを開始することを意味しない。
だがその可能性は排除できない」と語った。

今回の決定に反対票は出なかった。