米金融政策の正常化、アジア企業への影響に注意=中曽日銀副総裁

日銀の中曽宏副総裁は24日、都内でアジア経済を
テーマに講演し、米国の金融政策の正常化がアジア企業の
債務返済能力に与える影響に注意が必要との認識を示した。

中曽副総裁は、発展を続けるアジア経済の課題について、
1)生産性の持続的な上昇、2)人口動態の変化への対応、
3)グローバルなショックへの頑健性の向上、
などを挙げた。

このうち生産性の上昇に関して「アジアにおける
グローバルなサプライチェーンのハブとして
機能してきた中国の動きに変化が見られる」と指摘。

今年は中国の対外直接投資が対内直接投資を上回る
「画期的な年になることが確実視されている」とし、
中国企業による周辺諸国での生産拠点構築が一段と
進むことが「サプライチェーンの再編を促す。
アジア企業にとって、大きな環境変化」との認識を
示した。

また、輸出と内需の拡大には
「インフラ投資の拡大も重要」と主張。

インフラ整備が内需拡大につながるだけでなく、
「技術力のある海外企業の投資を促すことで、
生産性の押し上げにも寄与する」との考えを示した。

1990年代後半のアジア危機の教訓を踏まえ、
アジア各国は為替制度の柔軟化やマクロプルーデンス政策
導入などでショックへの頑健性を高めた結果、
リーマン・ショックの際にも「アジア市場への打撃は
相対的に小さなものになった」と評価。

もっとも、グローバル化の進展によって、アジア市場が
国際金融資本市場に組み込まれる中、「アジアの金融市場を
めぐる資本フローのボラティリティーは、否応なしに
高まる傾向にある」とし、一段とショックへの頑健性を
高めていく必要があるとした。

アジアの債券市場では、先進国による異例の
金融緩和政策によって資金調達コストが
低下してきたこともあり、「外貨建て債券比率は
このところいく分上昇している」と指摘。

米金融政策の正常化が展望される中で、「これがアジア企業の
債務返済能力に及ぼす影響などについては、注意していく
必要がある」と語った。

日本経済がアジアの成長を享受するには「経済構造の
変化に的確かつ柔軟に対応していくことが必要」とし、
日本の金融機関も「現地で事業を展開している
本邦企業のサポートだけでなく、現地企業の成長を
通じて現地経済の発展に貢献していくことが必要だ」
と述べた。

また、日本経済がデフレから脱却することで、「アジアの
持続的な成長にも貢献する」と強調した。