中国減速でも日本の輸出大きく落ちず、市場動向に注意=日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は26日、ニューヨークで講演と
質疑応答を行い、中国の景気減速について、
今後数年内に日本の輸出を著しく損なうことは
ないとし、中国経済は一段と鈍化するが、今年と
来年の成長率は6〜7%を維持するとの見解を示した。

ただ、新興国経済や金融市場の動向などの
リスクには注意が必要と語った。

総裁は「中国向け輸出は既に影響を受けているが、
今後数年の日本の輸出が(著しく)マイナスの影響を
受けるとは思わない」と指摘。

「中国が6〜7%の成長を維持していることや、
日本の資本財は非常に競合的なことが一因だ」
と述べた。

米金融政策については、連邦準備理事会(FRB)の
利上げは、実施されれば、米経済へのお墨付きを意味し、
世界経済や日本経済にとって前向きとの見方を示した。

もっとも、リスク要因として「新興国・資源国経済の
状況や、最近の国際金融資本市場の動向」を挙げ、
「十分注意を払っていく必要がある」と語った。

金融政策運営では、海外からの悪影響にもかかわらず、
追加緩和なしに物価目標を達成できるとの楽観的見方を維持。

この目標達成に失敗するとの見方は「実際とはかけ離れる」
ことになると述べ、石油価格の下落は物価全般に
一時的にしか影響しないとの見解を示した。

また、「現在の量的・質的金融緩和(QQE)によって、
2%の物価目標は達成できると考えている。現段階では
追加緩和についての具体的な案はもっていない」と指摘。

物価目標達成に向けて必要なら「もちろん」追加緩和を
行うとし、それに向けて「多くの選択肢がある」と語った。

QQE導入から2年余りが経過し、成果について
2013年度は良好だったものの、2014年度は
「冴えないものであったことは否めない」と
振り返った。

それでも経済・物価の下押し要因となった昨年の
消費税率引き上げと原油価格の急落の影響は一時的とし、
デフレ脱却に向けた動きは止まっていないと強調した。

この間の日本経済の大きな変化として、企業収益が
過去最高水準にある中で設備投資が積極化していることや、
完全雇用」が実現して賃金が上昇していることを指摘。

「賃金の上昇を伴いつつ、物価上昇率が高まっていく
という循環メカニズムがしっかりと作用し始めたことは
確か」と自信を示した。