追加緩和せずとも中銀の信認崩れない=黒田日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は30日の金融政策決定会合後の
記者会見で、2%の物価目標達成時期を先延ばししたものの、
追加緩和に踏み切らなかった理由として、原油安が
主な理由で物価の基調は上昇しているためと説明。

追加緩和せずとも「中央銀行としての
信認は崩れない」と反論した。

また「物価だけ上がればよいわけでない」と指摘、
物価と賃金、経済全体がバランスよく上昇する状態を
目指す姿勢を強調した。

黒田総裁は現在の大規模な金融緩和(量的・質的緩和、
QQE)を打ち上げた2013年4月以来、見通しが
下振れれば「躊躇なく政策を調整する」と追加緩和に
含みを持たせてきたため、市場では1)今回は追加緩和に
踏み切る可能性があり、2)踏み切らなければ
言行不一致になる、とみられていた。

総裁は、目標達成時期が後ずれる理由について、
「2015年度の成長率下振れなどの影響もあるが、
主として原油価格が理由」と説明し、物価の基調は
上昇している姿を維持していることを強調。

同日朝公表された9月の消費者物価指数は、
日銀が本来政策運営の目安とする生鮮除くコアCPIは
前年比0.1%のマイナスになったものの、生鮮と
エネルギーを除く新型コアコアCPIは「1.2%上昇した」
として、物価の基調が上昇している点を強調した。

そもそも2年で2%を実現するとの当初のもくろみに
無理があったのでは、との質問に対しては「2年程度を
念頭にできるだけ早期の達成を目指すと想定するのが
無理だったとは思わない」と反論した。

一方、「物価見通しは原油価格動向で左右される」
と繰り返し、今後も原油次第で達成時期が後ずれする
可能性を示唆した。

日銀は今会合で原油が2017年度末にはバレル
60ドル台前半(ドバイ産)に上昇すると仮定しており、
現行の40ドル台から大きく上がることがなければ、
自動的に達成時期はさらに後ずれする。

日銀はQQEの名の下で、年間80兆円(残高ベース)と
巨額の国債を買い入れており、国債発行額の3割をも
すでに保有しているため、インパクトある追加緩和手段が
乏しいため追加緩和に踏み切れないとの見方も市場の
一部に根強い。

総裁はしかし、「今の時点で国債買い入れに限界が
くることはない」「手段に限界あるとは全く思っていない」
と反論。

「英中銀は国債発行額の7割をも買ったことがある」
と例示し、その一方で「(日銀が国債発行額の)7割まで
買うと言っているわけでない」と火消しに走った。

日用品の価格を集計した東大日次物価指数は
足元1.7%程度まで上昇している点について
「エネルギーを含めた消費者物価はほぼゼロ。
日用品が上がっているから全体としてゼロで
いいというわけでない」とし、引き続き
消費者物価指数の上昇を目指す公式見解を
繰り返した。

一部の報道で今回の会合で追加緩和提案が
議論されるとの観測があったが、総裁は
「具体的な提案はなかった」と明言した。

総裁はこれまで米利上げについて、実施できるなら
米経済が堅調な証拠で、世界・日本経済にプラスとの
見解を繰り返してきたが、ロイターが米利上げ延期の
意義を質問すると「米国は今後ももっとも適切な
金融政策運営を続ける」とのみ回答した。