物価2%早期に達成とのコミットメントは不変=黒田日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は19日の金融政策決定会合後の
記者会見で、2%の物価目標を「2年程度を念頭に
できるだけ早期に達成するコミットメント(約束)に
変わりはない」と述べた。

原油価格が急落しているが「目標達成が
後ずれると今から決める必要はない」と反論した。

日銀は10月30日の決定会合で、2%目標の
達成時期を従来の16年度前半から後半に延期。

一方、政策運営の本来の目安である消費者物価指数
(生鮮食品を除いたコアCPI)が前年比でマイナスにも
かかわらず、追加緩和を見送った。

このため市場関係者の間では、日銀が「毎回の会合から
2年程度の期間で目標達成が見通せればよい、とする
政策運営にシフトした」との観測も出ていた。

黒田総裁はこれを否定し、早期の目標達成への
意志を示し続ける姿勢を強調した。

もっとも「量的・質的緩和(QQE)」がスタートした
2013年4月からすでに2年半が経過しており、日銀は
目標の達成時期をこれまで再三延期。

現時点でメドとしている2016年度後半に
2%が実現しても、のべ3年半となる。

総裁は、当初から「2年の期間しか緩和を継続するとは
言っていない」、「期限を区切った政策でなく、物価目標を
実現するまで継続する政策だ」と指摘し、緩和を続ける
期間よりも実現できるまで継続する重要性を強調した。

原油価格の下落が11月に入り加速し、日銀が指標とする
ドバイ産は足元40ドルと10月末時点の日銀想定(50ドル)
から大幅に下振れている。

総裁は「目標達成時期は原油価格で左右される」と述べ、
2016年度後半からのさらなる延期の可能性を否定しなかった。

同時に、原油価格が「足もとで振れているから直ちに
2%達成時期が後ずれると今から決める必要はない」
と述べた。

ドル資金の調達コストの上昇により、海外投資家による
短期国債需要が増大し短期国債金利のマイナス幅が
拡大している点については、「ある意味QQEの効果が
相当効いているということ。現時点で特に問題があるとは
感じていない」と述べた。

邦銀のドル資金調達についても「特段の問題は見られず、
一定期間混乱しても十分な流動性準備を確保している」
と語った。

また、パリの同時多発攻撃に関しては「欧州の
金融市場が平静を保っている」ことなどを根拠に、
世界経済や日本経済への影響は「現時点で限定的」
と判断。

「世界経済、日本経済に下方リスクをもたらす
恐れがないか今後注視する」との考えも示した。

日銀は13日、金利上昇などによる将来の収益減少に
備え引当金制度を導入するとの方針を公表したが、
「緩和からの出口とは関係がない」と述べた。