110円は通過点

円の上昇が際立ってきました。

対ドルで110円を超えて
109円台に上昇しました。

年初来、円は原油安、世界的株価の下落を
背景に、一段と上昇ペースを早めましたが、
その後、原油価格が上昇したこと、株価が
値を戻したこと、米国で4月に利上げが
行われるのではないか、などの思惑が
広がるなかで、円買いも勢いを失う動きが
出ました。

しかし、原油価格が軟調に転じるなか、
株価が下落、米国の利上げペースが鈍化する
との見方が強まったことで、再度、
リスク回避の円買いが強まり始めました。

加えて今回は、安部首相が米報道機関の
インタビュー記事で、円売り介入に
否定的な発言を行ったことから、これまで
円の上昇を抑制していた「円売り介入」
警戒感がなくなり、円があっさり110円を
突破するきっかけになりました。

アベノミクスの最大の特徴は、円安を
演出して、株高に繋げるというものでしたので、
今回の安部発言は意表をついたものでした。

アベノミクスの前提を崩してしまうような発言を
自分自身でするとは思わなかったのですが、
何らかの事情もあって、通貨安競争に繋がるような
円売り介入はしない、と言わざるを得なかったのか
どうか、その真意は不明ですが、安部首相の発言で
110円を突破したのは明らかです。

アベノミクスを開始した当初は、125円を
超える円安、一部では130円を超える円安を
演出しようとしているとの声も聞かれましたが、
さすがに日本の円安誘導に対して、国際的な
批判が出始め、その後は円はじりじりと上昇、
円高が進むなかでアベノミクスの効果も
剥落してきたとの声も聞かれました。

先のG7では、通貨安競争を防ぐ声明も
打ち出していることで、安部首相としても、
円売り介入を肯定する発言は出来なかったのでは
ないでしょうか。

円を押し上げたい向きが、安部発言を利用して、
110円を超える円高を作ったのではないかと思います。