トランプ米大統領、「エルサレムは首都」と正式発表

トランプ米大統領は6日、ホワイトハウスで演説し、
エルサレムイスラエルの首都と認め、
商都テルアビブにある米大使館の移転を
指示したと正式に発表しました。

歴代大統領が堅持した米方針の歴史的転換で、
米国が仲介役を務めてきた中東和平交渉の再開は
一層困難になりました。

パレスチナアラブ諸国は反発を強めており、
中東地域の治安情勢が悪化する恐れもあります。

選挙公約に首都移転を掲げてきたトランプ氏は
「歴代大統領は、移転延期が和平プロセスを
進展させると信じてきたが、和平合意に
全く近づいていない」と語るとともに、
エルサレムイスラエル国会や最高裁首相官邸
あることを列挙し、エルサレムを首都と認める
正当性を強調しました。

その上でパレスチナ紛争の「新しいアプローチの
始まりだ」と宣言しました。

一方で「米国は和平合意の推進に深く関与し続ける」と述べ、
2014年4月以降中断している和平交渉の再開に向けた努力を
続ける意向も示しました。

エルサレムの地位」を含む和平交渉について、特定の態度は
取らないと語り、パレスチナが東エルサレムを将来の
首都にする余地を残した形です。

ただ、パレスチナ国家樹立を認める「2国家共存」については
イスラエルパレスチナが同意すれば支援する」と
述べるにとどめ、これまでのあいまいな態度を維持し、
イスラエル寄りの姿勢を鮮明にしたトランプ政権の仲介を
パレスチナが受け入れる可能性は低いとみられます。 

この発表を受け、東エルサレムを首都とする国家樹立を
目指しているパレスチナ自治政府アッバス議長は6日、
演説で「和平に向けた努力をすべて台無しにした」と
強く批判しました。

一方、エルサレムを「不可分で永遠の首都」と主張する
イスラエルは「歴史的な日」(ネタニヤフ首相)だと
歓迎しました。

イスラエルパレスチナの和平交渉の再開は
一層遠のいたことになります。

アッバス議長は演説で「容認できない措置」であり、
「米国が和平プロセスの仲介役から退くという宣言だ」
と反発、その上で地域の過激派を助長することになると
警告しました。

パレスチナ自治区ガザを実効支配してきた
イスラム原理主義組織ハマスは、「地域における
米国の利益に対する地獄の扉を開けた」と
「宣戦布告」しました。

一方、ネタニヤフ首相は動画メッセージで
「トランプ氏の勇敢な正しい決断に心から感謝している」
と称賛し、「和平促進に向けたトランプ氏の取り組みを
反映するものだ」と持ち上げました。

ただ「聖地の現状にいかなる変化ももたらさない」と強調し、
デモや暴動を呼び掛けているパレスチナ側をけん制しています。 

イスラム教徒が多数の中東各国は6日、トランプ米大統領
エルサレムイスラエルの首都と認めたと発表したことを
受けて「決定を拒否する」と相次ぎ非難しました。

ヨルダンは「新たな現実を押し付けようとするすべての
一方的な動きは無効だ」と批判し、パレスチナ問題を
重視するエジプトも外務省声明で、中東和平交渉への
悪影響に懸念を示しました。

イスラエルとの断交も辞さないと強硬なトルコは
「否定的な結果になりかねない欠陥だらけの決定の
再考を求める」(外務省)と訴えています。

イスラエル生存権を認めないイランは、「中東の安定が
混乱する理由は、米国がシオニストイスラエル)を
偏向的に支持し、エルサレムを首都とする
パレスチナ独立国家を認めないからだ」(外務省)と
指摘、「挑発的で愚かな決定」と酷評しました。

イスラエルと敵対するシリアも「エルサレムの将来は
一国の大統領が決められず、その歴史とパレスチナ
大義が決める」(大統領府)と反発しています。

レバノンカタールチュニジア、モロッコなども
非難を表明しました。

一方、サウジアラビアの国営通信はトランプ氏の演説後、
サルマン国王とトルコのエルドアン大統領が電話で
今後の対応を協議したと伝えました。 

また、国連のグテレス事務総長は6日、エルサレム
イスラエルの首都と承認したトランプ米大統領の発表を
受けて声明を出し、「エルサレム(の帰属)は、
2当事者間の直接交渉で解決されなければならない
最終地位に関する問題だ」という立場を明らかにしました。

その上で「(イスラエルパレスチナの)『2国家共存』に
代わるものはない」と訴えています。

グテレス氏は「事務総長就任以来、イスラエルパレスチナ
和平の見通しを危うくするいかなる一方的措置にも
反対してきた」と表明し、「持続的な和平実現へ
(双方の)指導者が意味ある交渉に戻れるよう全力を
尽くす」と強調しました。 

この中、メイ英首相は6日、声明を出し、エルサレム
イスラエルの首都と認めたトランプ米大統領の発表に対し
「賛成できない」と表明しました。

メイ首相は「地域の平和の前途という観点から、それ(米決定)は
助けにならない」と述べ、トランプ政権に追従しない考えを
強調しました。

同首相は「エルサレムの地位はイスラエルパレスチナ間の
交渉による解決の中で決められるべきだ」とする英国の
従来方針に変更がないことを確認し、「エルサレム
最終的にイスラエルパレスチナ国家の共通の
首都となるべきだ」と指摘しました。 

欧州連合EU)内では6日、「深刻な懸念」
(モゲリーニ外交安全保障上級代表)を示す声が
相次ぎました。

EUと米国の関係はトランプ政権発足時からぎくしゃくしており、
今回のトランプ氏の決定を受けて溝が一段と広がった格好と
なりました。

モゲリーニ氏は声明で、イスラエルパレスチナの双方が
共存する「2国家解決」が、持続的な平和と安全保障を
もたらす「唯一の現実的な策だ」と表明しました。

モゲリーニ氏は、トランプ氏の発表前にパレスチナ自治政府
アッバス議長と電話会談し、「エルサレムの最終的な地位は
交渉を通じて決めるべきだ」と改めて主張し、議長に対し
「反応の抑制」を呼び掛け、パレスチナ側の冷静な
対応を求めました。

一方、フランスのマクロン大統領はツイッター
「米国の決定は認められない」と投稿し、その上で
「融和と対話を優先しなければならない」と訴えました。

ドイツ政府報道官もトランプ氏の決定を
「支持しない」と語っています。