トリシェECB総裁、インフレへのタカ派姿勢緩和を示唆

欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は29日、
欧州議会の経済・通貨問題委員会で証言し、
物価安定に対するリスクを見直していると述べた。

インフレ圧力に対する警戒姿勢を緩めるとともに、
来年に入っても当面金利を据え置く可能性を示唆した。

総裁はインフレ率について、向こう数カ月は2%を
上回る水準で推移するとの見通しを示したが、
8月4日の理事会後に言及した「物価安定に対する
上向きのリスク」という表現は用いなかった。

その上で「9月初旬に公表されるECBのスタッフ予想を踏まえ、
中期の物価動向見通しに対するリスクを分析している」と述べた。

6月に発表されたECBのスタッフ予想では、
ユーロ圏の2011年インフレ率は2.5〜2.7%、
2012年は1.1〜2.3%となっている。

最近の経済指標は弱い内容となっているものの、
総裁は「ユーロ圏全体としての経済ファンダメンタルズが
全般的に比較的健全であることから、今後も
ユーロ圏経済が緩やかなペースで拡大すると
予想している」と述べ、ユーロ圏が二番底に
向かっていることはないとの認識を示した。

一方で、トリシェ総裁は、ユーロ圏の債務危機
米経済見通しの軟化を受けて、依然として
不透明感が極めて強い状況にあると指摘した。

債券買い入れをめぐっては、ECBの責務を
超える行き過ぎた行動との批判に反論。

「われわれの責任の領域を超えないよう極めて慎重に
対応している」とし、「物価安定に適切と
判断したことを行っている」と主張した。

また「われわれの見解に基づけば、市場が
機能不全に陥っているのは政府の責任であり、
政府は自らが発行している債券の信認に責任を負う」
と断じ、介入実施を余儀なくされている状況に
対し不満をあらわにした。

ECBが同日発表したデータによると、
8月18〜24日の証券市場プログラム(SMP)に基づく
債券買い入れ規模は66億5100万ユーロと、
過去2週間の142億ユーロ、220億ユーロから大きく減少した。

欧州銀行間取引金利(EURIBOR)先物市場では、
来年初めにECBが約30%の確率で利下げを
迫られる可能性があるとの見方を織り込んでいる。