米大統領、「危機拡散防止に各国のリーダーシップ必要」

オバマ米大統領は、欧州が債務危機対策について合意したことを受けて
フィナンシャル・タイムズ(FT)紙に「欧州の危機拡散防止のための
ファイアウォール」と題するコメントを寄せ、世界経済の回復や
雇用創出のため、各国がリーダーシップを示す必要があると訴えた。

寄稿文の要約は以下の通り。

来週フランスで主要国の首脳が集まる際、2年前に世界経済を
金融危機から救いだした共通の目的を再確認する必要がある。

当時は、20カ国・地域(G20)の協調行動によって
世界経済が再び成長を取り戻した。

新興国の経済が回復したほか、米国では19カ月連続で
民間セクターの雇用が増加し、民間で250万人以上の雇用が創出された。

今の課題は明確だ。

われわれは強力で持続可能、かつバランスの取れた成長に焦点を当て、
世界の成長を押し上げ、雇用や機会を創出しなくてはならない。

それにはいくつかの分野で行動が必要になる。

第1に、米国は世界最大の経済国として、
引き続き世界をリードしなくてはならない。

世界経済の成長加速に向けてわれわれができる
最も効果的なことは、米国の成長ペースを速めることだ。

私が雇用対策を最優先課題としているのはそのためだ。

雇用対策法案を提出したのもそれが目的で、エコノミストは、
それにより200万人近い雇用が創出され、
需要や成長が押し上げられるとみている。

韓国、コロンビア、パナマ
自由貿易協定に調印したのもそのためだ。

それにより米国は輸出を倍増し、
競争力を維持することができる。

同時に、われわれは現在の回復を損なわず、将来の成長に向けた基盤を
構築するため、包括的でバランスの取れた大規模な赤字削減策を提案している。

第2に、欧州の債務危機をできる限り迅速に解決しなければならない。

欧州は今週、金融市場の信頼感回復に向けた
戦略について重要な前進を果たした。

問題の大きさやそれが世界経済に及ぼす脅威を考えれば、
その戦略を成功させることが重要だ。

それには、危機の波及を防ぐ信頼できるファイアウォールの構築、
欧州銀行セクターの強化、ギリシャにとって持続可能な航海図の作成、
危機の本質に存在する構造的問題の解決などが含まれる。

欧州連合は米国にとって最大の貿易パートナーで、
世界経済を支える重要な役割を果たしている。

私は欧州が困難を乗り越える能力を持っていると確信しており、
米国も引き続き欧州をサポートしていく考えだ。

第3に、世界がバランスの取れた持続可能な成長を遂げ、
昔のような不均衡に逆戻りするのを防ぐため、
それぞれの国が自分の役割を果たす必要がある。

財政再建が必要な国もあれば、多額の黒字を抱えた国は
成長を支える追加的な措置が必要だ。

輸出国にとって、それは内需拡大を意味する。

そういった経済のシフトを促す重要なツールは、
為替相場の柔軟性を高めることだ。

不均衡を避けるためには金融改革の推進も重要で、
それは金融危機の再来を防ぐことにつながる。

米国では大恐慌以来最大規模の改革を進めている。

G20全体で、銀行はショックを乗り越えられるだけの資本を維持し、
過度のリスクテイク、特にデリバティブに伴うリスクを
避けるために監視や透明性の強化も必要だ。

最後に、G20は世界が抱える問題について
協調を深めなくてはならない。

化石燃料に対する補助金をやめ、クリーンエネルギー経済への
移行を進める必要がある。

われわれが2年前にロンドンに集まった際、世界経済を
回復軌道に戻すのは容易な作業でも早期に
達成できることでもないことを知った。

だが、われわれは力を合わせて
世界経済を崩壊の淵から立て直した。

それはリーダーシップの賜物だ。

われわれにとって今必要なのは、自国ばかりでなく
世界全体の景気回復を持続させ、雇用を創出するための
リーダーシップにほかならない。