11月の月例経済報告、先行きリスクにタイ洪水など追加

古川元久経済財政担当相は24日午前、
11月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出した。

景気は「緩やかに持ち直している」とし、
基調判断は据え置いたが、先行きリスクに
タイの洪水や欧州債務問題を新たに追加。

特に、タイ洪水の影響は「予断を許さない」として、
内閣府が日本経済に与える影響をリポートとして
まとめることも明らかにした。

月例報告によると、11月の基調判断は、景気は
東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、
緩やかに持ち直している」。

前月は景気が「引き続き持ち直しているものの、
そのテンポは緩やかになっている」と「変化」に
着目した表記だったため、文言を一部変更した。

古川経財相は、会議終了後の記者会見で「サプライチェーン
立て直しが進展するにつれ、景気への追加的なプラス効果が
薄らいでいる」ことに加え、海外景気の回復が弱く
輸出が横ばいで推移していることなどから「生産は
持ち直しているが、そのペースが足元で鈍化している」と、
景気の現状を説明した。

項目別では、設備投資の判断を「このところ弱い動きも
みられる」と半年ぶりに下方修正した。

資本財出荷指数が8〜9月にかけて前月比で減少に転じたこと、
機械受注の減少などを踏まえたという。

輸出や生産は判断を据え置いた。

政府は10月に基調判断を
半年ぶりに下方修正している。

月例では、景気の先行きは引き続き「持ち直し傾向が
続くことが期待される」と前月までの表現を踏襲したが、
これまでも先行きのリスク要因として指摘してきた
「海外景気の下振れ」に「欧州の政府債務危機などを
背景とした」との表現を追加。

新たに「タイの洪水の影響」も加えた。

タイの洪水に関して古川経済相は、一部で生産を
再開する動きが出ていることに言及しつつ、
現地操業を停止している日系企業の収益や、
日本からの中間財輸出の減少、デジタルカメラなど
耐久消費財輸入の減少、部品供給の停滞による
生産活動への影響などを列挙。

「引き続き予断を許さない状況。
その動向を注視している」と述べた。

同時に経済相は、内閣府が近く、タイの水害が
日本経済に与える影響についてリポートを
まとめることを明らかにした。

内閣府で入手した情報やその分析を「できる限り国民に
発信するのは非常に大事」だとして、今後も毎月、
その都度テーマを設定してリポートを公表していく方針だという。

欧州の債務危機をリスク要因に追記したことに関して、
経済相は日本にも「株価や為替レートの変動、欧州との
直接的な輸出入、今回の危機の影響を受けた他地域との輸出入、
金融システムへの影響などを通じ、実体経済
影響が及びうる」と危機感を表明。

欧州経済動向や、世界経済に与える
影響を注視する方針を示した。

日銀の白川方明総裁はこの日の閣僚会議で、欧州債務危機
中国景気の減速など海外景気をめぐる諸問題が、日本経済に
影響を及ぼす可能性について「大きな『津波』(影響)がきたとき、
どう対応するかを考えておくことは重要だ、ということは
承知している」とした上で、金融機関の資金繰り状況の把握に
努めていることなどを説明した。

また、危機が波及した際、金融機関の手元資金の安定には
「ドルなどの外貨が重要」だと述べ、
海外の中央銀行と協調しているとした。

会議に同席した内閣府幹部が明らかにした。